ライドカメンズ短編

予感

 虹顔市に雨が降る。普通の雨ではなく、梅雨の雨だ。 今外はどうなっているのだろう。雨音が聞こえる以上、雨が降り続けているのは解る。だが、このまま降り続けていれば、地滑りで偶然見つけたこの洞窟の入り口が塞がれてしまうかもしれない。外に出るなら…

墓参り

 虹顔市を離れて一時間ほど。電車やバスを乗り継いだ先に、それはあった。「皇凜花、これが?」「ええ。私のママの墓」 凜花はそう言って、手に持っていた花をそっと下ろした。 二人は今、凜花の母が眠る墓の前にいた。 父と同じように、母も月命日などに…

お願い事を一つ聞く券

 執務室のデスクの引き出しの一つから、それを取り出す。 名刺サイズに切られたペラペラな紙には、少し崩れた文字でこう書かれてあった。 『お願い事を一つ聞く券』 小さい子の肩たたき券を思わせるそれは、自分へのプレゼントに困った魅上才悟が贈ってく…

あなたを信じてる

 異常気象だ何だと騒がれているものの、春の足音は聞こえてきている。そんな時期。「そろそろホワイトデーですね、ご主人様」 仮面カフェのカウンターでコップを磨きながら、レオンが明るい声で話しかけてきた。ちょうど客も少ないタイミングなので、ちょっ…

イノソンス

『特別なあの人に、特別なチョコを。ボーテ、アムール、シャンス、ミニョン、イノソンスの5種類、発売中』 デパートで見たその広告に、凜花は目を惹かれた。 チョコの名前は全部フランス語で、それぞれ美しさ、愛、幸運、可愛さ、純粋を指す。凜花が特に目…

遊園地でつかまえて

 私を探さないで、 楽しんでくれる? 仕掛けなんてないわ。 置いて行かないから、 寂しくないでしょう? 額面通りに受け取って構わないわ。 心配しないで。 手紙にしたんだから。 その手紙が届いたのは、食事を済ませてそろそろ出ようかと相談し始め…

聞きたい

「ごめんなさい、その日は財閥の方で仕事があるのよ」 1月10日。 ジャスティスライドから才悟の誕生日会に誘われたのだが、今年はあいにく仕事が入ってしまった。なので先に謝る事にした。 話を聞いた四人は顔を見合わせて落ち込むが、まあ仕方ないかと…

初日の出

 そのバイクが来たのは、朝六時前の事だった。 凜花は既に来訪を知っていたので、才悟がチャイムを鳴らす前にタワマン入り口で待っていた。「お待たせ」「いや、待っていない。キミは早いな」 バイクのキーを入れながら才悟が言う。実のところ、お誘いが嬉…

「既読」

 クリスマスは仕事だと最初から言っていたが、何もできないと言うわけではない。凜花はそうタカをくくっていた。 しかし現実は厳しく、コスモス財閥主催のパーティーに対し凜花ができる事は座っている事だけだ。 暇だからと言ってライダーフォンを見るわけ…

「●●●●」

「ほんと助かったよ。掃いても掃いても全然片付かないからさ」 そう言って才悟を称賛するのは、今回の依頼主である地区内会の一人。季節は秋なので、中央公園で大量の落ち葉を掃いて片づけたいのだが、人手が足りないという理由で、仮面ライダー屋全員に依頼…

逃避行

 ランスとQの問題と向き合うために、二人でホテルに泊まる事になった。高塔のチェックが入るのは重々承知の上で、ある。何かを考えているランスを横目に、ごろりと寝転がる。緊張感がない気もするが、体力回復のためだと自分に言い聞かせた。 どちらも何も…

あなたと花火を

『みんなで祭りに行こうぜ』 陽真曰く、虹顔市の隣の市で祭りがあるらしく、彼の誘いはそこの祭りだった。規模は虹顔市より小さいものの、花火も打ちあがるらしい。 そのラインに対し、凛花はすぐに「行くわ」と返信する。日にち的にも問題ないし、最近はカ…