聖夜の幻
雪がちらちらと降る。 町中の明かりも、どことなく暖かい。 今日はクリスマス。 しかし、ジャンゴはいつものサン・ミゲルにはいない。 何故なら、遠くの街でヴァンパイアが出たのでそれを退治にしに行ったからだ。 受ける時からこうなることは嫌という…
ボクタイ短編
さよなら、大好きな人
螺旋の塔からサバタだけが戻ってきたのを見た瞬間、言いようのない悪寒がリタの体を走り抜けた。「サバタさま!」 満身創痍という言葉がぴったりな状態のサバタに駆け寄り、その体を支える。出血はそれほどでもないのだけが唯一の救いか。 ザジが慌てて回…
ボクタイ短編
二十三時五十分
「……ちぇっ」 二月十四日。 カレンダーに印をつけながら、ジャンゴはぽつりと舌打ちした。 現在、二十三時四十分。あと二十分もすれば明日――二月十五日になる。 自分は、今日何をやっていたんだろうとふと思う。二十三時間四十分と言う間、どうやって…
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ティータイム
ジャンゴがサバタの行方を追い始めてから、もう何週間になるのだろうか。 その何週間の間、自分はジャンゴに会っていないのだろう。「何かなぁ、必要な時んだけ帰ってくるっちゅーのは倦怠期の夫がやる事に似てへん?」 ジュースをくるくるとストローでか…
ボクタイ短編
シャドウ
ある日の事。 ジャンゴが行方不明になった。 原因はおそらく、半ヴァンパイア化。 人ならざる異形の姿を恐れてか、彼は誰にも会わず何も言わずに商店街から姿を消した。「で、未だ行方知れずか」「こっちも必死で探してるねん!」 ようやくベッドから起…
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兄離れ
「ぜぇったい無理無理! やめた方がいいって!!」 よく晴れたある一日。久しぶりに来た学校の屋上で、俺――ジャンゴは目の前の少女――アルニカに向かって怒鳴っていた。「何よ、やりもしないで無理だなんて決め付けないでくれる? ちょっとした頼みみた…
ボクタイ短編
弟離れ
どかっとソファに座ったのを見て、おてんこさまが物珍しそうにこっちを見た。「ずいぶんとご機嫌斜めだな」「ふん」 そりゃそうだろう――サバタはそう思った。自分はどちらかと言うとキレやすい。ちょっとした事でも腹を立てたりしやすいのだ。 それでも…
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調査報告書
「暗黒ローン突然の閉鎖と「ラビアンローズ」なる剣についての調査報告書」・調査開始のきっかけ長年太陽バンクと共に愛されてきた「暗黒ローン」であるが、ある日突然の閉鎖を宣言。閉鎖の理由については「一部の客による借金踏み倒し」の一点張りで、その原…
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雨
嗚呼、嗚呼 これこそが――! サバタは天気についてそれほど好き嫌いはなかった。 暗黒少年と言われているが、別に太陽の光や雨がダメージになると言うわけではない。夜目も効くから、明かりの有無で困る事もなかった。 だから、雨が降っていてもサバタ…
ボクタイ短編
日の差さぬ処でも
ぎっ、とバイクのタイヤが止まる。 潮風が流れるこの土地に、まず青い服の少女が立った。「ここ?」 辺りを警戒していた赤いマフラーの少年が問えば、少女は無言でうなずく。 少女の視線の先には、青々とした葉をたくさん茂らせる太陽樹があった。 ジャ…
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