ボクタイ長編7

Change Your Way・19「歌と共に」

 ヴォートのこともあるので、サバタとカーミラは近くの町で休むことにした。『シヴァルバー』から見て北の方で、彼らは知らないが、セレンのいる劇場からはかなり近い。 とりあえず落ち着くために宿を取って、部屋のベッドにヴォートを寝かせる。来るまで何…

Change Your Way・18「強くなる理由」

 ジャンゴとユキが影人たちの街にたどり着き、サバタとカーミラが「夢子」の双子達から全ての『筋書き』を知らされていた時。 ザジはおてんこさまを連れて、『シヴァルバー』近くまで来ていた。宝珠を持っていない彼女がここまで迷わずに来れたのは、セイの…

Change Your Way・17「唄女(うたいめ)」

 カルソナフォンの顔の変わり具合にリタは内心で首を傾げたが、それでも決意は変わらない。例えこの先に死が待っていたとしても、すくんで動こうとしなければ何も変わらないのだ。 雲も流れて動くから天気が変わる。今の状況を変えたければ、動くしかない。…

Change Your Way・16「静かな場所」

 自分って何だろう。 何を以て自分と言うのだろう。 もし自分以外の意思が自分の体の中にいるとしたら……。 もし自分であり自分でない意思が、何らかのきっかけで出てきたとしたら……。 穏やかな風がカーテンを揺らす。そのカーテンから気まぐれにこぼ…

Change Your Way・15「庇う者。庇われる者」

 視線をユキの方に向けたことで、ミホトに隙が生まれた。彼女には悪いが、大きく蹴り飛ばすことでジャンゴは一旦間合いを取る。 ユキをかばうように立つと、あっという間に彼女の顔が夜叉のような憤怒のものになった。また大きく飛び込んで、鎌を大きく振る…

Change Your Way・14「唯一の、肉親」

 サン・ミゲルを出たジャンゴとユキは、道なき道をてくてくと歩いていた。「ユキ、どうすれば『シヴァルバー』へと行けるんだ?」 ジャンゴの問いに、ユキがうーんと唸る。困り顔とも取れるその顔は愛らしく、ジャンゴは何となくスミレを思い出した。 ………

Change Your Way・13「出発」

 夜明け前。 太陽と月と闇が交錯する時間。 そんな中で、ザジは一つの星を見る。 空にあるのは昴。 その昴が、激しく瞬きをくり返す。 星が陰る中でも、昴の瞬きは消して変わらない。 まるで何かを告げようとしているかのごとく。 &nbs…

Change Your Way・12「さ迷い歩く者」

「……遅いな」「そうですね」 宿屋では、途中で出て行ったジャンゴをザジたちが心配していた。ジャンゴが出て行った後で、ユキもトイレと言って外に出たので、心配は二重である。 ジャンゴには悪いが、サバタはまだユキを信じていない。クストース襲撃によ…

Change Your Way・11「遠い幻」

 昼ごろに、ジャンゴは仲間を集めてユキを紹介することにした。遅い時間になった理由は、サバタとカーミラが午後まで起きなかったからだ。 地下水路の隠し部屋では名前を名乗りあうぐらいの単純な自己紹介しかしなかったので、ジャンゴたちやユキは互いに質…

Change Your Way・10「離れる」

 遺跡の崩壊は、朝になるまで誰も気づかなかった。 理由は単純。音を立てずに遺跡が朽ち果てたからだ。一夜で何万年もの時を越えてしまったかのように、あっさりと。 一番最初に気づいたのは結局朝まで駆けずり回っていたサバタとカーミラだった。暗黒転移…

Change Your Way・9「こころ」

 外に出たはいいが、この先どうするかを考えていなかったことに気づく。 自分のカンでは外に出れば何かしらの展開があると思っていたのだが、それはさすがにご都合主義もいいところのようだ。「ビドゥ、貴方は何か分かりません?」 腕に抱えたままの猫は、…

Change Your Way・8「『ハジメマシテ』」

 リタは怪我人の手当てをあらかた終えて、店に戻っていた。手当てに使った太陽の果実を数え、出庫数を整理していると、ドアが開いてジャンゴがやって来た。 すぐに立ち上がるが、一つの違和感に気づいて首を傾げる。ジャンゴはその腕に、白い猫を抱えていた…