ボクタイ長編4

精霊残華「~KOGITO ELGO SUM~」

『我思う。故に、我有り』 あいつは最後までそれを貫いた。 だからウチは、あいつの意思をしっかり汲み取らなあかん。 「どうしたんだザジ?」 急にしゃがみこんだザジにセイは手を差し伸べるが、ザジはいやいやとその手を拒絶した。「セイも」…

精霊残華「Who am I?」

 ――たかが杖に人の姿を与えるなど…… 俺は杖。持ち主に力を与える名前のない杖。 ――セイは人間や。 俺はセイ。魔法使いの少年。 俺は杖? それとも人間?   がたり「「!?」」 比較的大きな物音に、二人は大きく反応した…

精霊残華「~君と俺~」

 グール。通称『ボク』。 一般的なアンデッドである。その存在は一般人にも知られ、「夜遅くまで起きているとグールが食べに来る」など子供のしつけにも使われるほどだ。 日の光に弱く、大抵は洞窟などの暗がりに潜み、外に出るのは日が沈んでからである。…

精霊残華「~聖女さま~」

「行方が分からなくなるとは……」「申し訳ありません」 女のつぶやきに、まだあどけなさを残しながらも固い声の少女が答えた。 少女の謝罪に、女はゆるくウェイブのかかった紫の髪をもてあそびながら、その美しい顔をほんの少しだけゆがめた。「どのような…

精霊残華「~魔法使いと魔女~」

 最近自分の家になっている宿屋で寝ていたザジは、とある音で目が覚めた。 何か大きな物を投げ出したかのような大音。「…うにゃー、一体なんなんや……」 目を何度もこすりながら、おぼつかない足取りで階段を下りる。丑三つ時である今、手すりがないとす…

精霊残華「~移り行く伝説の欠片~」

 魔女や巫女、ありとあらゆる魔法使い達の間で一つの伝説がささやかれている。 それはある意味、太陽の精霊おてんこさまや銀河意思ダークに近いほど雲の上の伝説で、ある訳がないとも言われるほどの伝説。 究極の杖の伝説。 曰く。その杖は、持ち主に究極…