PARTS・12
濡れている自分の服は、乾かすために熱くなっている剣のそばに置く。マントを羽織りなおすと、リタは外にいるジャンゴを呼んだ。 ジャンゴは濡れた服のまま中に入ってきた。着替えが無かったのか、乾かす必要が無いと思ったのか。視線で尋ねると「僕のはす…
ボクタイ長編2
PARTS・11
一番最初に目に飛び込んだ場所に入る。 太陽スタンドを見て、ジャンゴはそこで初めて自分が入ったのが血錆の館だと気がついた。 エンチャント・フレイムをかけた剣を突き立てて、焚き火の代わりにする。 剣の側にリタを寝かせ、ジャンゴはグレネードのラ…
ボクタイ長編2
PARTS・10
雨の中、ジャンゴがサン・ミゲルを走り回る。 一ヶ月前はレインコートを忘れたために風邪を引いた事もあり、今回はちゃんと防水機能がしっかりしているマントを羽織り、傘を差していた。 ――リタは、まだ帰ってきていなかった。 最近出没するヴァンパイ…
ボクタイ長編2
PARTS・9
細かな血痕。 飛び散り具合から見るに、惨劇がここで起きたらしい。その後で誰かが徹底的に掃除したのだろうが、こういう細かい物についたものまでふき取らなかったようだ。 もっと手がかりが無いかと書斎を調べまわすが、30分ほどかけても何も出てこな…
ボクタイ長編2
PARTS・8
リタが手荷物をまとめていると、部屋の外でわいわいと騒いでいるのが聞こえた。驚きというより、黄色い歓声だった。 不思議に思ってドアに近づくと、開ける前にドアが開かれた。「リタ、王子様がお迎えに来たわよ♪」 同僚の言葉に、リタは首をかしげた。…
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PARTS・7
ふぅ ため息。「どうした、ジャンゴ?」 ふぅ またため息。「だからどうしたんだジャンゴ」 ふぅ ジャンゴはおてんこさまが聞いてるのに気づいていない。「チェストォォォ!」「はぅわっ!」 おてんこ・電光石火(仮名)を頭に喰らい、ようやくジャン…
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PARTS・6
翌日。 リタは職場放棄の罰ということで、書庫整理をさせられていた。 隣に何故かジャンゴがいるあたり、二人の関係を誤解した誰かが一緒に放り込んだようである。 書庫は広いが、それだけならまだいい。問題はラインナップだ。 昔の書物はぼろぼろだか…
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PARTS・5
翌日。 早朝から歩き、リタはようやく目的地である「神殿」へとやってきた。そこは、リタが2年前まで暮らしていた場所でもあった。 扉を叩こうとすると、誰かに呼び止められた。 リタが声のほうを見ると、同僚だった。顔に見覚えがないので、最近来た新…
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PARTS・4
リタの問いに、サバタは「ある程度はな」とはぐらかした。「俺から答えを聞きたいか?」 静かに首を横に振る。ここでサバタから答えを聞けば、おてんこさまの条件である「なるべく早く帰ってくる」事をあっさりクリアできる。が、ここで答えを聞くのは負け…
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PARTS・3
リタをゆすって起こしたのは、同僚であり、イストラカン事件前まで一緒に行動していた少女・エスカティナだった。「あ……」「久しぶり。今まで連絡なかったけど、どうしてたの?」「ええ、まあ」 エスカティナの挨拶をはぐらかすリタ。イストラカン事件を…
ボクタイ長編2
PARTS・2
――ねえ、どうして私にはパパとママがいないの? 小さい頃、リタは一緒に住んでいた祖母にそう聞いたことがある。 その時は「そのうちね」とはぐらかされた。それからリタが5歳ほどになる頃、祖母は太陽樹を見せてくれた。『あの樹はね、リタのお父さん…
ボクタイ長編2
PARTS・1
「……旅に出ると?」「はい。サン・ミゲルの太陽樹さまも成木になられましたし、一度巫女長さまにご報告を」 果物屋。 珍しくおてんこさまとリタが長々と話し合っている。内容は今後のことらしい。 エターナル騒動も一段落し、この間(『寂しい気持ち』参…
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