流星短編

写真に写った物

 その日、ミソラは次に出すアルバムセレクションのジャケット撮影に来ていた。「いいよいいよミソラちゃん、もっと笑顔ちょうだい!」 カメラマンの要望通り、笑顔をたくさん向ける。営業用のスマイルではなく、カメラの先にいるであろうファンの皆に向けた…

積み重ねていくもの

 とある町で、ソロと会った。「久しぶりじゃん、元気?」「……」 相変わらずの不愛想かつノーリアクション。逆にそれが挨拶の一つでもあると解ってるミソラは、「お腹空いてない?」とソロに聞いた。「貴様には関係ない」「何も食べてないならちょっと食べ…

私の夢へ

「ふん、このぐらいで泣き言を言わない辺り、少しは覚悟を決めてるようだな」 そう言う襲撃者。 この国民的アイドルに対してその態度。普通の人間だったら訴えてとことん追い詰めてやるところだ。だけど、この相手に対してそれは通用しない。 だから。「当…

アイスクリーム考察

「あー、最悪」 バケツをひっくり返したかのようなゲリラ豪雨に対し、ミソラはそう愚痴った。 珍しく今日の仕事は午前中に終わった。 なので近くの街に降りてウィンドウショッピングを楽しんでいたのだが、視界の端に黒い何かを見たのが運の尽き。 気づけ…

くろゆめ

 ゆめかうつつかまぼろしか ただひとつだけいえるのは てをさしのべられなかった 暗い闇の中に、ミソラは一人いた。 確か布団に潜り込んで寝たまでは覚えているので、多分夢の中なのだろう。 夢の中と認識できる夢なんて珍しいな、なんて思う。せっかく…

騒音

 がこん、がこんと電車が通る音。 どどどどど、とドリルが地面を削る音。 ぎゃあぎゃあと誰かが叫ぶ声。『最近ここも騒がしくなってきたわね』 ハンターVGの中のハープが困った声を上げる。無理もない。自分たちのように音を商売にしている者にとって、…

会談

「あ、ルナちゃん? ちょっと出れるかな……」  某月某日。 ミソラはオフの日に、ルナに電話をかけて呼び出した。 場所はソロと一緒に飲んだバーが良かったが、あいにく昼間から飲むわけには行かない。そこで、個室が取れる定食屋を選ぶことに…

Don’t touch my woman!

「ルナちゃん、まだかなぁ」 2月13日。 ミソラはルナと一緒にバレンタインのチョコレートを買いに来ていた。 とは言っても本命チョコは既に作り終えており、今買いに来ているのは義理チョコ・友チョコの類だ。 ルナがおすすめの店があると言って連れて…

幻の名曲

 響ミソラの曲はいろいろ存在する。 絆の尊さを歌った「ハートウェーブ」「絆・ウェーブ」。 ある人物へのラブレターとも言われる「シューティング・スター」。 それ以外にもたくさんのミリオンヒットを世に出してきた彼女だが、その中で一つだけ「幻の名…

ツーサイドアップ

 ソロは何もない日は適当にどこかを歩くのが日課になっている。新しい発見があるかも知れないからだ。 その日も特に何もないので、ソロは適当に街中をぶらぶらと歩いていた。 ゲーム店に立ち寄って面白そうなレトロゲームを探したり、喫茶店で暖かいコーヒ…

アイソレーション・タンク

 バレンタインの日、ソロはいつも通りミソラからチョコレートを渡された。 最初の頃は何か裏があるのではと警戒していたが、数年続けばさすがに純粋なプレゼントだと解る。 受け取らないという選択肢もあるが、そうすると後々厄介な騒動になるのは既に経験…

缶コーヒー考察

 夏真っ盛り。 暑いを超えて熱い空気の中、ミソラは自動販売機の前に見覚えのある後ろ姿を見つけた。「ソロ?」 ミソラの声に、自動販売機の前で立ち尽くしていたモノクロな人影がこっちを向く。さすがに暑いのか、いつもの鋭さを感じなかった。 ……いや…