ライドカメンズ短編 – ページ 3

「魅上くん、美味しい？」「ああ」「そ、そう」「……」　何とも言えない空気が二人の間に圧し掛かる。　何とかしなくては、何とか言わなくてはと、脳内で慌てて言葉を探すも、何一つ浮かんでこない。　頭に浮かぶのはただ一つのフレーズ。（どうしてこうなっ…

「ショックだったか？」　VIPルームに入った瞬間、宗雲にそう言われてエージェントの少女は微苦笑を浮かべるしかなかった。　――実は、宗雲と魅上才悟が件の恋愛ドラマについて語り合っている間、彼女もそこにいた。　話の内容が内容なだけあって、どうし…

　――さすがに駅で出会った時は、驚くなんてレベルじゃなかった。「あの、魅上くん。何でここに？」「キミに付いて行くためだ」「……」　迷いなく言われて、エージェントの少女は思わず沈黙してしまった。　――ある日、凛花は唐突に次期財閥総帥の立場も、…

「いや、別にあのお二人の仲を裂きたいわけじゃないんですよ？」　結論から言えば、本当にそれだけの事なのだ。　レオンは先代が財閥総帥だったころから仕えているベテラン執事である。　今現在はその先代の忘れ形見である一人娘に仕え、彼女を立派な財閥総帥…

　気持ちいい風が、顔を撫でる。　そんな風にあおられるように空を見上げれば、青空が広がっている。いい天気だ。「みかみせんせー！」　後ろから自分を呼ぶ声が聞こえる。その声に振り向けば、小さな子供たちが手を振っていた。　自分を呼んでいたのは、一番…

　キミが好き。　それに気づいた時、湧き上がったのは嬉しさと恥ずかしさと暖かさと　――不安。　魅上才悟が風呂から上がると、同居人の伊織陽真がドラマを見ていた。最近始まったもので、大学生の男４人と事情があって学校に通わない女１人が織りなす擬似家…

　恋と言うのは厄介で、意識しだすととにかくその人しか目が入らない。　これが普通の人間ならまだマシなのだろうけど、私はエージェント。しかもサポートするライダーは複数。その人だけしか……なんてできない。　そして何より。　私の想い人……魅上才悟に…

　出会ってからずっと、キミは色んな事を教えてくれた。　知らなかったこと、知る気のなかったこと、教わらなかったこと、教わる気のなかったこと、様々。　いつしかキミに聞くことが日常になり、アカデミーで学んだことよりもキミから教わったことの方が多く…

「最悪だわ……傘を忘れるなんて」　唐突のゲリラ豪雨。　それに見舞われた私は、傘を持ってこなかった自分に唾を吐きつつ、近くの建物に逃げ込んでいた。　今日は珍しいオフの日。　図書館に借りていた本を返したまでは良かったんだけど、端っこにあった黒い…

　――なまえをよんで「……何をしているんだ？」「あ、魅上君」　夜。　クリアファイルを抱えてバタバタしているところを、仮面ライダーの一人である魅上才悟に呼び止められた。　無理もない。仮面カフェの仕事も終わっているのに、何らかの書類を抱えて走り…