あにいもうと
彼女にとって魅上才悟は兄であり、弟である。 年齢的には兄なのだが、性格的に危なっかしく、何かと世話を焼きたくなってしまう。そういう点では、弟ともいえる。 ……少なくとも、少女にとって才悟はそんな存在だった。「ほら、魅上くん。袖が汚れるわよ…
ライドカメンズ短編
全部颯のせいです
ある日の仮面カフェ。 いつも通りに水を頼み、それを飲んでいると、景気よくドアベルが鳴って颯が入ってきた。「やっほー! ……あれ、才悟?」 颯はこっちに気づくと、ぱたぱたとこっちに近づいてくる。別に一人で飲みたかったわけでもないので、黙って…
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「ミカミサイゴ」
鳴り響くベルに、仮面ライダー才悟は足を止めた。 たくさんの生徒たちが校舎に吸い込まれていく。どうやら朝の登校時間のようだ。『今日授業終わったら何する?』『はー、やっと朝練終わった~』『おい、そろそろ校門閉めるぞ!』『やだなー、宿題済ませて…
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デート指南
「魅上くん、美味しい?」「ああ」「そ、そう」「……」 何とも言えない空気が二人の間に圧し掛かる。 何とかしなくては、何とか言わなくてはと、脳内で慌てて言葉を探すも、何一つ浮かんでこない。 頭に浮かぶのはただ一つのフレーズ。(どうしてこうなっ…
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恋愛勉強中の彼の後ろで
「ショックだったか?」 VIPルームに入った瞬間、宗雲にそう言われてエージェントの少女は微苦笑を浮かべるしかなかった。 ――実は、宗雲と魅上才悟が件の恋愛ドラマについて語り合っている間、彼女もそこにいた。 話の内容が内容なだけあって、どうし…
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モラトリアム・ガール
――さすがに駅で出会った時は、驚くなんてレベルじゃなかった。「あの、魅上くん。何でここに?」「キミに付いて行くためだ」「……」 迷いなく言われて、エージェントの少女は思わず沈黙してしまった。 ――ある日、凛花は唐突に次期財閥総帥の立場も、…
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執事の独白
「いや、別にあのお二人の仲を裂きたいわけじゃないんですよ?」 結論から言えば、本当にそれだけの事なのだ。 レオンは先代が財閥総帥だったころから仕えているベテラン執事である。 今現在はその先代の忘れ形見である一人娘に仕え、彼女を立派な財閥総帥…
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その未来は許されていない
気持ちいい風が、顔を撫でる。 そんな風にあおられるように空を見上げれば、青空が広がっている。いい天気だ。「みかみせんせー!」 後ろから自分を呼ぶ声が聞こえる。その声に振り向けば、小さな子供たちが手を振っていた。 自分を呼んでいたのは、一番…
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魅上才悟の不安
キミが好き。 それに気づいた時、湧き上がったのは嬉しさと恥ずかしさと暖かさと ――不安。 魅上才悟が風呂から上がると、同居人の伊織陽真がドラマを見ていた。最近始まったもので、大学生の男4人と事情があって学校に通わない女1人が織りなす擬似家…
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アドバンテージ
恋と言うのは厄介で、意識しだすととにかくその人しか目が入らない。 これが普通の人間ならまだマシなのだろうけど、私はエージェント。しかもサポートするライダーは複数。その人だけしか……なんてできない。 そして何より。 私の想い人……魅上才悟に…
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「教えて」
出会ってからずっと、キミは色んな事を教えてくれた。 知らなかったこと、知る気のなかったこと、教わらなかったこと、教わる気のなかったこと、様々。 いつしかキミに聞くことが日常になり、アカデミーで学んだことよりもキミから教わったことの方が多く…
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彼のジャンパー
「最悪だわ……傘を忘れるなんて」 唐突のゲリラ豪雨。 それに見舞われた私は、傘を持ってこなかった自分に唾を吐きつつ、近くの建物に逃げ込んでいた。 今日は珍しいオフの日。 図書館に借りていた本を返したまでは良かったんだけど、端っこにあった黒い…
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