オレの中にあるもやもやとした気持ちは何だ。
そう聞かれて、何も答えられなかった。
それは嫉妬だ、と答えれば、貴方は私の事を好きだと言うことを理解してしまう。奥底にしまっておいた気持ちが、目覚めてしまう。
だから教えられない、としか言えなかった。
たとえそれが貴方を傷つけることだと解っていても。
ねえ、覚えてる?
アカデミーで「守り通せない」と言われた時。
あの時の横顔を見て、心から支えたいと思った。貴方の苦しみを取り払えるなら何でもできる、そこまで思えたのは初めて。
公園で貴方が怪我をした時。
撃たれていないのに撃たれた気がした。急所は外れているとしても、貴方の身体から血が出ているのを見て、身体が冷えるような気がした。
誰かを助けたいと思ったならオレに言え、と言われた時。
助けたいのは貴方だ、と何度言いたくなった。何も覚えてなくて、ライダーと言う生き方しか解らない貴方を、ただただ救いたかった。
私の言葉でいいなら安いものだし、私の命で貴方が救われるならそれで良かった。
でもその重みを知れば知るほど、私は何もできなくなってしまった。
貴方に恋をした。
たったそれだけで、私は何も言えなくなった。
笑顔と言う仮面を張り付けて、エージェントと言う箱の中に私の想いをしまった。
私たちが培ってきた絆を失いたくないから、重い重い蓋をした。
それを貴方は開けようと言うの?
貴方の他に欲しいモノなんてない、なんて気持ちを知る覚悟は、あるの?
恋は何度かしたことあるけれど、ここまで重い気持ちを抱えるなんて思わなかった。
ここまで恋焦がれる気持ちが私にあるなんて信じられないくらい。
これ以上進んだら、私が私でなくなりそうな、そんな怖い予感だってある。
私が私でなくなることよりも、それで貴方を傷つけて、貴方を失うことの方が怖い。考えれば考えるほど、私は臆病になっていった。
貴方の言葉はできるだけ答えたい。
貴方が知りたいことはできる限り教えたい。
限界があると解っていても、私にできることがあるなら何でもしたかった。
――ただ一つだけ、貴方が好きだって事を伝えること以外は。