「教えて」 - 2/3

 あいつがまたライダーステーションに行った。まあトレーニングのためなんだろうけど、多分成果は出ないだろう。
 最近のあいつ……才悟はなんか様子がおかしい。いつもならトレーニングやら自然散策やらできびきびと動くのに、最近はぼんやりとどこかを見てたりする。
 まあ、様子がおかしいっつっても、いつものあいつと比べればというだけ。でもおれは何となく原因を知ってる。

 多分あいつ、あの子が好きなんだろうな。

 思えばアカデミー卒業試験の日、普段から「ライダー以外の事には興味ない」なんて言う男が可愛い女の子を連れてきたってだけで(怪人に襲われてたから保護しただけなんだけど)びっくりだってのに、その女の子に恋までしてるんだから驚いたもんだ。
 初恋……なのかなぁ。よく解らない。おれが言えるのは、あいつは自分の恋心をまだ自覚してないって事。でもいっちょまえに、ヤキモチは妬いてるって事。
 この間のピクニックの買い出しの時、才悟はおれに誘われたから行く気になったのかと気になってた。当日は、何かとあの子の方に視線を向けていた。
 ……あー、よくよく考えたらこれで気づくなって方が無理だよなぁ。あからさますぎ。あれで無自覚なんだから、自覚したらどんだけすごいことになるんだか。

 あの子は、どう思ってるんだろうな。

 少なくとも、嫌だって感じはないと思う。あいつは自分の時間で生きてるようなマイペース男だけど、悪い奴じゃない。嫌われるようなことはしてないと思うから、嫌っちゃいないはず。
 でも何も言ってこない辺り、あいつのことはただの友達としか見てないのかな。もしそうだとしたらご愁傷様だ。
 だけどなー。お似合いだと思うんだけどな。おれから見たら、結構いい雰囲気っぽい事何回かあったし。
 
 遠くで、夕方の放送が流れてる。

 そろそろ晩飯の支度しないとな。今日の晩飯は……才悟の好きなオムライスにするか。そんでもって、晩飯を食いつつ話を聞いて、励ましてやろう。
 ヤキモチを妬いてるだけじゃどうしようもないぞ、ぐらい言わないとな。
 多分あいつは何だそれはって言うだろうけど。

 ……そうだ、今度あの子におれ特製オムライスのレシピでも教えようかな。
 ああでも、オムライスぐらいあの子も作れるか。そもそも執事さんの方がもっと旨いオムライス作れるだろうし。
 おれは黙って見てた方がいいのかも。

 それにしても、恋かぁ。
 おれもしたいな。そんな出会いがあるかどうかだけどさ。