「女王の確保? そーかい。じゃあ俺達も粘る必要はねーな」
颯から連絡を受けたRUIが「そう言う事だ」と全員に作戦終了を告げる。それを聞いたピアシャールとリバラールもやる気をなくしたか、構えを解いた。
「ちぇっ、楽しそうな玩具はお預けか」
「仕方ありません。一旦彼らに預けることにしましょうか」
捨て台詞を残して消え去る二人に、「最初からそうしとけ」と返すルーイ(当然彼らには聞こえなかったが)。他の連中はと言うと、それぞれが変身を解除しながら肩を貸したりすることで何とか立ち上がっている。
「無事に保護出来たのか?」
慈玄の言葉に応じるかのように、カオスワールドの扉から次々と変身解除したライダーたちが出てきた。
数日後。
ライダーステーションの医療室に送られたガオナの女王を前に、凛花、レオン、戴天、宗雲の4人が揃っていた。
ガオナの女王は今、睡眠剤を注入されて眠っている。人間のそれで完全に効くかは謎だが、戦いの疲れもあってか今のところ一度も目を覚ましてはいない。
「で」
ライダーフォンの通話をONにした状態で、凛花が戴天と宗雲に向いた。
「話を聞かせてくれませんか」
口調こそ詰問のそれだが、語気はいつも通りの柔らかさだった。単純に、宗雲が剣を止めた理由が聞きたいだけなのだから当然だろう。
『まじめに話さないと、あの宗様に女の影が、なんてスキャンダルになると思うよ?』
「勘弁してくれ」
浄の冗談に頭を抱える素振りを見せる宗雲。浄が言うとシャレにならない、と誰かが突っ込んだ。
また追及の目は戴天の方にも向いていた。
『兄さん……』
「泰然自若。私は大丈夫です」
騒ぎが続くと女王が目を覚ましそうなので、戴天が代表して手を上げて騒ぎを一旦ストップさせた。
「まず彼女の名前ですが、美哉百子(みかなももこ)。彼女もまた、カオスイズムにさらわれていた若者の一人です」
『『……』』
沈黙する中、「そして」と戴天が続ける。
「私と宗雲さんと同じく……アカデミー一期生だった女性です」
『う、うっそー!?』
『マジかよ!』
通話の向こう側でまた騒ぎになる。
さすがにその騒ぎで彼女の目がぴくりとなったので、凛花が落ち着いてと声をかけた。
『アカデミーに女性の生徒がいたとか、聞いたことないんだけど』
そう言うのは元二期生の静流。同じ二期生の皇紀やルーイは無言だが、おそらく頷いているのだろう。
「海羽さん、聞いたことあるんですか?」
『んー、俺一度だけ『女がいなくて花がないなあ』ってぼやいた事があるんだけど、その時教官が滅茶苦茶渋い顔したんだよね。印象深かったから、覚えてる』
なるほど。
アカデミーの実態を知っている教官がそのような顔をしたと言う事は、過去に何かあったのは予想できる。ただ静流はそれ以上突っ込む気はなかった、と言って話を〆た。
『そういやボクも、アカデミー候補生のリストをリバルに渡した時に、『女の子はいいの?』って聞いた事あったなぁ。その時は『いらない』で切り捨てられたけど』
そう話に割り込んできたのは、かつて大幹部直属の部下だったQだ。虹顔市で起こる2年に1度の「若者大量失踪事件」。その事件の被害者に女性がいないのは共通の事実だったが、まさかカオスイズムの方が拒否していたとは思わなかった。
『フラリオ、お前んとこは?』
『オレんとこもなかったなぁ。だいたいアンビスはお気に入り以外いらねえって感じだったし』
同じく大幹部直属の部下だったフラリオは、主に下町地区の警戒とカオストーン回収を命じられていたらしい。女性がいないと言うことに関して、それほど疑問を持たなかったようだ。
『では、カオスイズムは一期生以外は女性を採用しなかった、と?』
そう聞くのは為士。その隣で狂介が「何でお前がまとめてんだ」と突っかかっているが、毎度同じく松之助が抑えていた。
「恐らくそうでしょう。女性はいろいろと問題があると判断し、男性のみをさらうようになったんだと思います」
『でもおかしいよな。カオスイズムには女性幹部がいるのに、何でアカデミーは男子校みたいになってたんだ?』
戴天と宗雲以外の全員を代表するかのように、陽真が手を上げて質問する。その質問を受けた二人はお互い顔を見合わせ、渋い顔になった。
しばしの沈黙。
ルーイがあくびするぐらいの時間ののち、宗雲が口を開いた。
「おそらく、『卒業試験』の事件が関わっているんだと思う」
そうして彼は語り始めた。
『卒業試験』に起きた凄惨な事故を。