孤独な欲望に囚われて・7

「あ……ま、またイグッ♡ イッぐぅぅぅーーーーッッ!!!♡♡」
「うっ……!」
 二回目の絶頂。
 ギリギリのところで意識を保ったミソラは、ブライの方を見る。
 彼の方は少し荒い息をついているので、珍しく体力を使っていたらしい。もしかしたら、仕事の方でかなり大変な目にあったのかも知れない。
 ずぽんっと膣から肉竿が抜かれたことでびくりと体が震えるが、熱が引くのと同時に快感も引いていった。
「はぁーっ……はぁーっ……♡」
 荒い息を整えていると、ブライが服を投げてきた。よく見てみると、それはブライの服だ。
「いいの?」
「服を破られただろう」
「替えの服ぐらいあるよ。そこのクローゼットに……」
「黙って着ろ」
 命令口調になってきたので、ミソラは服を羽織る。袖を通すにはそれは大きすぎた。ブライがそれを見て一瞬だけ目をそらしたのを、ミソラは見逃さなかった。
 さて。ブライは椅子に座り「何が聞きたい」と聞いてきた。
「ちゃんと答えてくれる?」
「質問の内容次第だ」
 都合の悪い質問は避けられるということか。相手のさじ加減で変わるだろうから、少し分が悪い。
 ミソラは深呼吸を一つしてから、口を開いた。
「ソロって、貴方の本名?」
 ブライ……ソロは無言でうなずいた。
「何ではぐらかしてたの?」
「教える必要がなかったからな。今ではブライの方が呼ばれ慣れた」
 本当にそれだけなのか聞きたかったが、おそらくはぐらかされるだろう。気になりはするが、それよりも気になることがあった。
「この家、何で人がいないの?」
「人を入れて寝首を搔かれるなら、入れない方がマシだ」
「え」
 絶句した。寝首を掻かれる、つまりソロの命を狙う者がいるということだ。ソロの武勲をねたんでのものか、それとも自分が知らない事情があるのか。
 聞いてみるべきか戸惑う。よくよく考えれば、この国の現状をよく知らないのだ。一応毎朝届く新聞は読んでいるが、いつも似たり寄ったりの内容だ。
「貴様らから見れば強国に見えるかもしれんが、実際はガタガタだ。いつ崩壊してもおかしくない」
 ソロはそんなミソラの動揺に気づいたか、ぼそぼそとこの国について説明し始めた。
「ディーラーは確かに軍が強い。しかし、それも弱い国や民族を無理やり吸収したり、金で強い奴らを雇ってるにすぎん。昼間ここを襲ってきた奴らも、イエティが金で雇ったチンピラたちだ」
「じゃあもしかしてブライ……ソロも、正式に軍に入ったんじゃなくて、無理やり入れられた感じなの?」
 ミソラが聞くと、ソロは「そうだな」と簡単に答えた。
「今のディーラーはそういう奴らが暴利を貪ろうと群がっている。しかもそんな状態でミーティアや他の国を襲ってるんだ。まともな味方はいないはずだ。“ 冷潔の女王クイーン・ヴァルゴ”にもそっぽを向かれたからな」
 冷潔の女王クイーン・ヴァルゴクインティア。確か音速の英雄アシッド・エースシドウと婚約手前まで行っていたが、ミーティア陥落によって流れたとされている。そんな彼女にディーラーが接触していたのは知らなかった。
 ソロはそんな国の中で、何故軍人をやっているのだろうか。無理やり軍に入れられたと言っているが、それなら何故やめないのだろう。ついでだから聞いてみることにした。
「そんなにガタガタな状態なのに、なんで軍をやめないの?」
「何?」
 この質問は予想外だったか、ソロの目が少し丸くなる。少し考える素振りを見せてから、ぼそりと答えた。
「オレのような奴は、戦場ぐらいしか必要とされん。拾われたのが偶然ここの軍だっただけだ」
「そんな」
 自身を蔑む言葉に、ミソラは思わずそんな事ないと言いかけた。
 何も知らない自分がそれを言ったところでどうなると言うのか。そもそも、そこまで思いやる相手ではないはずだ。
 その代わり、次の質問をすることにした。
「さっき、兵士たちが『誰々に渡す』って言ってたよね。それってどういうこと?」
「……」
 返答は沈黙。
 都合が悪かったか、と思った瞬間、ソロがようやく口を開いた。
「いずれ、解る」

 それから数日は、いつもと変わらぬ日常だった。
 朝と昼はメイドとしてせっせと家事をこなし、夜はソロに抱かれる。そして眠り、また同じように朝を迎える。

 ただ、ミソラの内心は間違いなく変わりつつあった。

 一番はブライの呼び方を「ソロ」に変えたことだ。
 本名を教えてもらった以上、いつまでも呼ばないのも気分が悪い。ソロは気にしないのだろうが、ミソラとしてはまるで赤の他人のような気がして嫌なのだ。
 そう、ミソラの中でソロの存在が少しずつ大きくなってきていた。
 最初のころの怒りはすっかり鳴りを潜め、今はセックス漬けの夜もそれほど辛くも苦しくもない。気持ちに余裕ができた、とは少し違う気持ちが湧いてきている。
 この気持ちは何なのだろう。
 ……いや、実際何なのかは解っている。ただ、自分の表の心がそれを否定したくて仕方がない。それだけなのだ。

「ん……ふぅ……」
「れろ……ちゅく♡」
 深い口づけの間に、メイド服をするりと脱がされる。ぷるんとこぼれた胸にそっと指を這わされ、口から空気が漏れる。
 当然だがソロはそれを見逃さず、さらに揉みしだく。先ほどよりも強烈な快感に、ミソラは唸りながらよがった。
「どうしてほしい」
 唇を離したソロが、わざとらしく聞いてくる。
 恥ずかしさのあまり視線を逸らすと、ソロは無言で右の乳首をぺろりと舐めた。
「は……♡ い、いきなりやめてぇ♡ んんっ」
 左の乳首をつままれて、さらに蕩けた声を上げる。いつも通りの、ディープキスからの胸への愛撫。
 何度やられても……否、何度もやられたからこそ、快楽の痺れに参ってしまう。当然だがソロも解っているからこそ、胸への攻めを執拗に続けるのだ。
「あ……んっ♡ はぁ……ッ」
 淫らに喘ぎつつもソロの事をじっと観察してみる。口先は余裕しゃくしゃくだが、その表情は少し余裕がなかった。
(無理しちゃって……)
 そんなことをぼんやりと思う。
 快楽の熱とは違う、暖かい何かが心に満ちる。可愛い、とさえ思えるのだ。
「ソロぉ……」
 名前を呼ぶと、それに応じてさらに攻めが激しくなる。甘噛みも加わり、ミソラの身体は大きく跳ねた。
 ソロの表情をまた観察する。部屋が暗いので解りにくいが、少しだけ顔が赤い気がした。
「あ、んっ!」
 次甘噛みされたのは耳。耳垢までなめとられるような勢いを受けて、さらに蕩けた喘ぎ声をあげた。
 左の手はいまだ胸への愛撫を続けており、ぴんと軽くはじかれる。完全に勃ち上がった乳首は、痛みよりも快感を身体に走らせた。
「ひぁあっ♡」
「いい声だな。そろそろか」
「や、は、早くぅ……!」
 耳と胸の快感に耐えきれず、とうとう自分からねだってしまう。そんな完敗宣言に近い言葉を受けたソロが、ミソラの腰をつかんでずぷぷっと肉竿を入れてきた。
「あ゛あ゛あぁぁっ!♡」
 待ち望んでいた深く強い快感に、思わず膣内の肉竿を強く締め付ける。

 どちゅっ、ずりゅっ

「は、んっ♡ あああっ、あーっ!♡」
 先ほどと同じように、喘ぎながらもソロの表情を観察する。挿れた後のソロは言葉数が少なくなり、ひたすら自分の膣内をかき乱す。切羽詰まっているとさえ感じるのだ。
 ……まるで何かに怯えているかのように。
(何、だろう……)
 ソロの焦りや怯えが解らない。ソロは自分を支配しているはずなのに、ソロ自身はそう思っていないようなのだ。
 自分はここにいるのに。どこにも行かないのに。

 じゅぽっ

「あ、あぁっ♡ そ、ソロっ、そこっ、もっとぉっ!♡」
 肉竿が膣内の弱いところを刺激し、考えていることを押し流していく。淫らな欲望に書き換えられていく。
 ミソラの淫らなおねだりを聞いたソロはしばらく同じ場所を刺激するが、ミソラの様子を確認してまた動き出した。
「んあ゛あ゛っ!!」
「出すぞ……!」
「う、き、来てぇぇっ!」
 ミソラの言葉を聞いたか、ソロの肉竿が一番奥を突いた。同時にソロの欲望が、最奥で荒れ狂う。
「ああ゛あ゛あ゛あぁぁぁーーーッッ!!♡♡」
 狂いそうな熱と快感。失われていく体力。それらに耐えながらも、ミソラは確かに見た。

 切なそうな目をした、ソロの苦しそうな顔を。