あの後、10分ほど休んでからミソラは食堂に行って食事をとった。
ブライは既に食事を済ませたらしく、その場にいなかった。食事は冷めていて味も落ちていたが、ミソラは黙って口に放り込んだ。
そして夜、ミソラはブライに呼ばれたので部屋に向かった。理由は当然、夜の相手だ。
深いキスに酔いしれている間に服を脱がされ、裸でベッドに寝転がされる。ブライに見られただけで、秘部がくちゅりと鳴った。
ブライはそれを聞き逃さなかったようで、前戯もほどほどに肉竿を膣内に押し込んだ。
「んんぁぁっ……やぁんっ♡」
食事前のセックスですっかり出来上がっていたため、ミソラの膣はブライの肉竿をあっさり飲み込んでしまった。
「や、やめてぇ……」
「いいのか? 貴様のここは咥えこんでいるぞ」
「ひぃ、ん……、や、やだぁ……♡」
見せつけるように軽く揺すられ、思わず強く締め付けてしまう。
いやいやと首を横に振って意思表示するものの、相変わらずブライは気にすることなく胸を揉みだす。
「……柔らかいな」
「は……♡」
胸を揉みしだかれてミソラは甘い吐息を吐く。
ブライに言われたように、柔らかい胸は彼の手の動きによって形を変える。弾力もあるので、どれだけ強く揉んでもすぐに形を戻した。
当然、桜色の乳首もこりこりと愛撫された。
「ふぁああ♡ は……ぁッ♡ と、とろけちゃうよぉぉぉ……あぁぁんっ」
ぷっくりとした乳首への愛撫。指が少し動くだけでも、喘ぐ声を止められない気がした。
股間の方もびくびくと細かく動くので、身体が跳ねそうになる。肉竿が膨れ上がっていると錯覚してしまうくらい、熱が身体を駆け巡っていた。
「ら、らめぇ、おっぱいこりこりしないでぇっ……♡」
「吸われる方がいいか」
「はぁんっ♡」
指の愛撫から口と舌の愛撫に変わる。じゅると吸われ、くにくにと舌でいじられて喘ぎ声をあげた。
身体が言うことを聞かない状態のまま、何となく視線をブライの体の方に向ける。今の彼も裸で、戦場で付いたであろう傷が縦横無尽に走っている。それは解るのだが。
(……?)
何か気になる。違和感と言うより、見覚えのあるものがあるような気がするのだ。
「どこを見ている」
「あ゛あ゛っっ!」
目を凝らして見ようとしたら、ブライに気づかれた。一瞬考えていたことが頭から飛ぶが、ミソラはそれでもブライの身体を見続けた。
気になる。だが思い出せない。こんな時どうすればいいのだろう。
ぱじゅっ!
「あッ!♡ ~~ぅっ!♡」
傘の部分で膣内で一番弱いところを刺激され、ぴんと足が硬直した。
続いてじゅぽじゅぽと揺すられ、ミソラの身体が大きくしなる。限界は近いと本能で悟った。
「はぁぁ、あんっ♡ あぁぁ! い、イキそう……ッ!♡」
「オレもだ……! 出すぞ!」
ぐちゅっっ! どぷちゅぅぅっ!!
「あぅぅっ! ふぁあ゛あ゛あぁぁぁーーッ!♡」
絶頂とほぼ同じタイミングで、子宮内が精液で満たされた。
珍しくブライの方が力尽きたか、唸りつつミソラの隣に倒れこむ。食事前に一回やったからかな、とミソラは能天気に考えてしまう。
何の気なしに彼のわき腹に触れると、違和感を覚えた。
「え……」
ざらりとする嫌な感覚。慌てて触れた指を見ると、赤くにじんでいた。
もう疲れとか気にしている場合ではない。ミソラは慌てて起き上がり、改めて自分が触れた場所を確認する。
生乾きの傷跡が、そこにあった。
「ちょ、ちょっと!」
今日の仕事でついたであろう傷は、そう深くも大きくもない。しかし放置するにはその傷は大きすぎた。そしてブライはその傷を抱えたまま、ミソラを抱いたことになる。それだけ傷の手当よりも性欲処理の方が大事なのか。
ブライは何か反論したいようだが、傷の痛みか疲れで言葉が出てこないらしい。無言でミソラの手を払った。
「そんなに私とヤりたいわけ?」
怒りよりも呆れの混じった声で聞くと、ブライはやっと体力が回復したのか、ぼそりと答えた。
「……当たり前だ。そのために連れてきたんだからな」
怒りが呆れを上回った。
つかもうとしてきた腕を振りほどき、床に落ちていた服や下着を拾う。一秒でも同じ部屋にいたくないので、裸のまま廊下に飛び出した。
「最っ低!!」
翌朝、ミソラは自室のベッドで目を覚ました。
結局怒りは収まらず、服を着るのもそこそこに布団にもぐりこんだ。今の時期、暖かかったのが幸いだった。少しでも寒ければ風邪をひいていただろう。
「……」
夜のことを思い出すと、怒りや悔しさ、悲しみでぽろりと涙がこぼれる。
少しは情があって自分を抱いているのだと思っていた。それがただの性欲処理のためと言われたのだ。泣きたくもなる。
このまま泣いて寝て休んでやろうかと思った。しかし冷徹なブライのこと。休んだら部屋に乗り込んで、そのまま抱くのが目に見えた。
ミソラは涙を拭いて起き上がった。床に投げっぱなしだった衣類を取り、着る。しわが少し目立つが、働いていれば気にならないだろう。
「ん?」
エプロンを付ける時、妙に重いのが引っかかった。
何かしまったっけ、とポケットを探ると、倉庫で見つかったペンダントが出てきた。
(あ……)
ペンダントトップのデザインを見て、昨夜の事を思い出す。ブライの身体に、このデザインに似た痣を見たのだ。
(ってことは、これはブライの物?)
冷静に考えれば、この家にいるのは自分とブライ、あとはラプラスのみ。自分はこんなデザインのペンダントを持ってないし、魔導生物は必要以上に物を持たない。あとは消去法でブライしかいないのだ。
……もっと冷静に考えれば、この屋敷にいるのが自分含めて三人だけというのはおかしい。
屋敷は小さいものの、もう少しメイドなどがいてもいいはずだ。
ブライの名前はミーティアでも知られている。二つ名通り誰ともつるむことなく、淡々と敵将を打ち取っていく男。
人嫌いとも言われているので使用人を雇いたくないのだろうが、それでも人がいなさすぎる。屋敷も小さいし、建っている場所も城下町からやや遠い場所だ。
戦歴の華やかさと比べると、彼に対する扱いがひどい気もしてくる。考えすぎだろうか。
もうちょっと調べる必要がある、とミソラは確信した。
いつもの掃除と洗濯をこなしつつ、何か手掛かりになりそうな場所を探してみる。
とはいえ、すぐに見つかるようなものではない。特にミソラが立ち入れる場所にはラプラスの手も入っているので、ミソラが気になる物は既に片付けられている可能性が高い。
それでもミソラは慎重かつ丁寧に探していく。昨日のように、偶然何かが手に入る可能性は無きにしも非ずだ。
『ミソラさま、あまりあちこち動かれませんように』
ラプラスに見とがめられた。さすがに大っぴらにあちこち探しまわるのはダメか、とミソラは内心反省する。
「そうだけど、もう掃除するところなくない?」
『……』
ミソラの突っ込みに対し、ラプラスはしばし沈黙した後、『ではベッドメイキングを』と新しい指示を出してきた。どこの、とは言われなかったので、まずは自室のベッドから始める。
(そういえば、この部屋もあんまり調べてなかったな)
毎日ここで寝て起きるので客室の印象はすっかり薄れていた。思い返せばここをしっかりと調べた記憶はなく、もしかしたら何かある可能性があると言えばある。
ベッドメイキングをさくっと済ませたミソラは、自室をじっくり調べてみることにした。客室のテンプレートであるベッド、テーブル、たんす、そして本棚。ついでにテーブルやベッドの下も調べてみた。
……しかし。
「うーん……」
十分ほど探し回ってみたが、それっぽいものは何一つ見つからない。客室故に仕方ないと思う反面、せめて何かないのかと思ってしまう。
諦めきれずに念入りに探し回っていると。
『ミソラさま、大丈夫ですか』
さすがに長く探し回りすぎたか、ラプラスがドアをノックしてきた。時計を見ると、一時間近くはこの部屋で「ベッドメイキング」していたことになる。
「ご、ごめん、今行くよ」
悪いことをとがめられた気がして、ミソラは慌ててドアへと駆け寄った。
その後、もう一つの部屋のベッドメイキングも命じられてそれにかこつけて部屋中探し回ってみたものの、手掛かりは何一つ見つからなかった。
(……そうなると)
残るはやはりブライの部屋。本人の部屋なら、何の手掛かりもなしではないだろう。
しかし、彼がセックス以外の理由で自分を部屋に招くことはない。そのセックスもこっちが疲れ果てるまでするものだから、調べものをする余裕などないだろう。
忍び込むにしても鍵がなければ入れない。そしてマスターキーは、ラプラスが肌身離さず持っている。
(えっち以外の理由で部屋に入れてくれればいいんだけど)
しばらくは、そのチャンスを待つしかなさそうだった。