彼が結婚から逃げ回っているのも、その理由も知っている。
その理由に、私が大きくかかわっていることだって知っている。
だけど、それでも一つの覚悟と誓いとして、繋がりたい。
私の心の中にうずくまるスバル君と、けりをつけるためにも。
ペンダントを贈ってくれたよね。
私が何となく見ていたら、そんな所で立ち止まるなとぶっきらぼうに言って買ってくれた。
花を贈ってくれたよね。
生きて帰ってきて、と言ったら、手紙と一緒に花が添えられていた。
用意した衣装の色は、何物にも染められない漆黒。
その生地に手を触れた瞬間、私は心の底からぞわりとした何かを感じた。
ああ、私はこれを着るんだ。
これを着て、二人で覚悟を決めるんだ。
見つけた聖堂の廃墟は、誰もいなかった。
そこにソロを連れていき、ペンダントとともに私の覚悟を見せる。
「お互い、覚悟を決めよう?」
そう言えば、彼はそうだなとうなずいてくれた。
相手の口を犯すような激しいキスの後、ドレスを脱ぐ。
乳房とお尻が丸出しな、薄い生地の下着――私の覚悟の一つ。
これを見せられた時は「恥ずかしいよ、こんな格好」と笑ったけれど、今はこの格好が一番合っていると思う。
「随分と準備万端だな」
ソロが皮肉たっぷりに笑うけど、一瞬目を奪われたことには気づいている。
あんな激しいキスをしておいて何もしないまま終わるなんてありえない。もう何度もセックスしている関係なのだから。
これくらいしないと、彼は動いてくれない。
「どうせ汚れるもん」
と笑って、ソロの手を自分の乳房に当てさせた。ごつごつした手が暖かく、そして少しいやらしい。
「は……♥」
ああ、早くいっぱい気持ちよくして欲しい。いつものようにえっちな気分にさせて欲しい。
しかしソロはそんな私の気持ちを無視して、乳房から手を離す。ということは。
「じゃあ、こっち?」
下着ごとスラックスを下すと、ソロの大きな肉竿が顔を出した。びくびくと震えているあたり、やっぱり興奮してるんだと解った。
しゃがみこんで、ちゅ、と口づける。誓いのキスみたいだなあ、なんてぼんやり思ったり。
口淫は何度もしたことがある。最後は飲んだり顔にかけられたりいいところで止めたりとその時次第だから、今回はどうなるかな。
竿や亀頭、玉を舌でぺろぺろ舐めていく。ソロの弱い場所はもう把握済み。その証拠に、彼の息は少しずつ上がっていっている。
「えへへ♥」
せっかくなんであと一押ししようと乳房で挟もうとすると、ソロが止めてきた。
「四つん這いになれ」
どうやら今回は途中で止めるパターン。乗ってきた状態で止められるのは少しテンションダウンだけど、こういう時にソロには逆らえない。
でも、ここは廃墟。地面は砂利がいっぱいで、ちょっと痛い。どうしようかと思ってたら、ソロが透明なマットを敷いてくれた。ムードってものがないな。
「無駄に傷を増やすよりマシだと思え」
はい、知ってます。そうやって気を使ってくれてるのも、我慢もそろそろ限界だってことも。
だけど。
つぶりゅっ
「あぁぁんっ!♥」
入ってきたのは肉竿ではなく二本の指。膣内の指が好き勝手動き回るから、腰が抜けそうになってしまった。
「あっ、やぁっ♥ はぁぁっ! ふぁぁ……♥」
ぐちゅぐちゅとえっちな音が鳴る。下着を使って陰核もいじってくるから、なおさら気持ちいい。
ソロの指は私の弱いところを全部知っている。私もそれを知ってて腰を動かしちゃうから、もうイッちゃいそう。
たまらない。たまらない。もうダメ。
「い、イくぅぅぅ! んん~~~ッ!♥」
……イッてしまった。
ちょっと腕に力が入らなくなってくたっとしそうになったら、ソロがその腕を引っ張ってくれた。ソロは体力も力も私よりはるかにあるから、こういう時すぐに助けてくれる。
でも、いつものように秘部に肉竿がつけられた瞬間、ちょっとした違和感があった。
「あ……」
ゴムをつけていない。
ソロはいつもどのような場所であっても挿れる前にはゴムをつける。私も注意してるけど、彼はそれ以上に徹底的に避妊してるのだ。
なぜなら、ソロは子供を望んでいないから。
前に理由を聞いたけど、「スキャンダルで騒がれたいか」と切り捨てられた。私が妊娠すれば、必然的に父親を探し出そうとする流れができるからだ。
でもそれ以上に、ソロは自分の血が子孫に遺伝することを恐れている。自分の身に降りかかった壮絶な過去が、自分以外の誰かに起こることを恐れているんだと思う。
だけど今はゴムをつけず、そのまま行こうとしている。本当に、それでいいのか。
一度ソロの方を向いたら、彼はいつもの――でも熱を帯びたまなざしで私を見た。
「チャンスは一度だけだ」
その時、私は彼の本当の覚悟を悟った。
ソロは、私のために自分の血や誇りを捻じ曲げてまで繋がることと、私と子供を作ることを選んだ。それが彼の本当の覚悟。
嬉しさのあまり涙が出そうになったけど、それより先に「行くぞ」と彼の熱いモノが私の中に挿入ってきた。
「あっ、あぁっ、あぁぁぁーーっ!♥」
一瞬目の前が白くなる。いつもとは違う強烈な快感。
ぱじゅっ
「あんっ」
どちゅっ
「はぁっ♥」
ずちゅぅぅぅぅっ!
「いい感じに締まってるぞ。興奮したか」
「あんっ! したよおぉっ♥ ふぁぁっ、ソロの咥えてぇっ、気持ちよくなってるよぉぉぉっ!」
「なら出してやる。後悔するなよ……!」
「い、いいよぉぉっ! ソロのあついのほしいぃぃ!♥」
「ふん……ッ!」
えっちな水音と一緒に挿入ってくる音。お尻と腰がぶつかる音がたまらない。私の膣内も、ソロの肉竿を感じてきゅうきゅうと悦んでる。
廃墟とは言え聖堂、しかも結婚式(というにはお粗末だけど)の途中のセックス、ダメなのに腰も膣も止まらない。えっちで幸せな気分が私を気持ちよくさせている。
そうだ。私、今幸せなんだ。
ちょっと前まではスバル君と幸せになるんだって思ってた。というか、私を幸せにできるのはスバル君しかいないと思ってた。
だけど、あの夜。
スバル君とルナちゃんの結婚式の夜。私はソロと出会い、ソロの本当の心を垣間見てしまった。
ベッドに誘い、彼に抱かれた。その時、自分の中にもう一つの恋が眠っていたのに気づいてしまったんだ。
それからは何度もセックスした。そしてやっと気づいた。私だって、何も手に入れてなかったんだって。
ソロから見れば、きっと私は何でも手に入ってる幸せな女なんだと思う。
でも私は小さいころ親を亡くした。そしてスバル君も私のもとから離れていった。
お金なんてちょっと派手に使えば無くなるし、今の芸能人の立場だってスキャンダルがあればあっという間に落ちぶれる。そんな危ういものだ。
大事なものは気づけば手から離れていく。
だからこそ、ソロが何も手に入らないと叫んだ時、私が与えることができたらと本気で思った。
何も手に入らないなんてないんだよって、教えたかったんだ。
「イけ! 受け止めろ!」
「はぁぁああああぁぁーーーーーッ!!♥♥」
そして今。
私はソロにイカされた。
気を失いそうなくらいのすごい快感と、私の中にたくさん入ってくるソロの欲望そのもの。
ああ、私はちゃんと求められた。
欲しいって思われたんだ。
「ちゃんと、手に入ったね」
その一言を受けて抱きしめてくれた時、私は心の底から暖かくなった。
――私も、手に入ったよ。
「ちゅ、く、えろ、んふぅぅ……」
「ふぅ……む……」
心が通じ合った今、私のえっちな欲望が跳ね上がった。
もうダメ。淫乱とか言われてもいい。ソロにいっぱい気持ちよくして欲しい。
「お願い。私のここ、ソロでいっぱいにして」
私の中を満たしてほしい。彼の事以外考えられないくらいに。
スバル君との思い出を、きれいに昇華させてほしい。
ソロは一つうなずいて、私をマットの上に寝かせる。好きにしてって言ったら、彼は丁寧に全部脱がしてくれた。
お互い裸の私たち。ドキドキと興奮が止まらない中、ソロが動いた。
ぢゅうううううううう!!
「はあ゛ぁっ!!♥」
最初に触らせてから、ずっとほったらかしだった乳房――乳首が思いっきり吸われた。たったそれだけで、私はイッた。
ソロはセックスの度に乳房を揉んだり乳首をいじってくるから、すっかり弱点になっていた。たまに感じすぎて、それだけで軽くイくくらいに。
だから今回はずっと放置されてて、正直私はむずむずしてたんだ。早くいじって欲しい、揉んで欲しい、めちゃくちゃにして欲しいって。
まさかわざと放置してたなんて思わなかった。もしかしたら、あの下着のせいなのかも。
「そ、ソロ、ずるいよぉ。おかしくなるぅぅ……♥」
「なれ。もっとオレを悦ばせろ」
「バカぁ……あ、あんっ♥ もっとぉ……」
ソロはこういう時、本当にずるく意地悪になる。もっと欲しいなら動けって。だったら動くしかない。
ぐいっと押し付ければ、お望み通りいっぱい揉んだりいじってくれた。多分彼も我慢してたんだろうなってぼんやり思う。
「あはぁ、あっ、ふぁあっ♥」
気持ちよすぎてよがってたら、ソロからまた舌を絡めてくれた。そのまま抱きしめ合う。
彼は自分をバケモノと自嘲気味に言ってたけど、本当にバケモノならこんなに暖かいとは思わない。大丈夫。彼は人間だ。
なんてことを思ってたら、いつの間にかソロは私の股間に顔を近づけていた。
「あ゛ぁぁんっ!♥」
さっきの乳首と同じぐらいの勢いで、秘部のあたりを強く吸われた。当然、またイッてしまう。
そのあとは息を吹きつけられるわ、陰核を軽く吸われるわで本当におかしくなりそう。もう自分から腰は動くし、口を開けばえっちな事しか言えない。
「んん……っ! そ、そこ、いぢめないでぇ……っ♥」
じゃあどこがいいんだって言われたらどうしよう。多分どこをいじられても感じちゃうし、イッちゃいそう。
それよりも、めちゃくちゃになってるところに挿れて欲しい。多分ソロも我慢の限界だろうし。
と思ってたら、ぺちゃりと肉竿をくっつけられた。挿れるというより、置かれた感じだ。
じゅぷぷっ!
「く……っ!」
「はああぁぁっ!」
擦られた。
さっきまでとは違う、けどさっきよりも強烈な快感が駆け巡った。私も、ソロも。
ぴゅるっとソロの肉竿から白濁汁が飛び出る。そう言えばまだゴムつけてなかったな……なんて思ってたら、ソロの目の色が変わった。
「……!」
ぞくりとした。
まるで獣。今まで一度もしたことのない、欲望に満ち満ちたその目に、体の奥がきゅんとなった。
「ミソラぁぁっ!」
腰をつかまれたかと思うと、一気に肉竿が入り込んだ。あまりにも激しく、一瞬の出来事に体が大きく反り返る。
「そ、ソロっ! ちょ、あんっ♥ は、激し、ふああぁぁぁっ! 激しすぎぃぃぃっっ!♥」
「知るかっ! 言え! お前の気持ちを言え!!」
どきりとした。
言っていいの?
本当に、想いを伝えていいの?
ぱんっ!
「あはあ゛あ゛あぁぁんっ!♥」
胸によぎる不安をかき消すかのように、激しい快感が私の体を襲う。
気持ちよすぎる。イッてしまう。
このままじゃ、何も言わずにまた終わってしまう。それだけは嫌だ。
「どうなんだっ!」
切羽詰まった声のソロが、私に答えを急かす。
今しかないんだ。もう何も考えちゃダメだ。聞きたいというなら、言えばいいんだ。
「好きっ! 大好きぃっ!! 愛してるよぉぉっ!!」
大好き。大好き。誰よりも貴方を愛してる。死が二人を分かつまで、貴方に全てを捧げたい。
「そうか、ご褒美だ! 出してやる! お前の中に全部出してやる!!」
「い、いいよぉぉっ! 来てぇぇっ!♥ 全部全部出してぇぇぇっ!!♥ ああああぁぁぁぁっっ♥」
高まる快感。溶け合う体。繋がり合っているという実感。膣内を激しい律動でえぐられ、視界が真っ白になる。今までの中で一番激しくて、一番気持ちいいセックス。
ああ、どうか、どうか。私だけの貴方でいて。今だけでもいいから、私だけを見て。私の中で気持ちよくなって欲しい。
「イくっ! イッちゃう!♥」
「ミソラっ! ミソラぁぁっ!」
「ああああぁぁあああーーーーーーーッッ!!♥♥」
子宮にソロのモノが満たされていくのを感じる。ずっと待っていた、最大級の快感。
体を大きくしならせて絶頂に耐えていると、ソロも私の腰をつかんでひたすら絶頂に耐えていた。
やがて完全に出し切ったか、ソロがずるりと肉竿を私の中から出す。
やっと終わったんだ。
「はぁ……はぁ……っ」
「ふ、ぅ……」
もう続きをできるとは思えないぐらい疲れた。ソロも同じようで、先に息を整えたけど服を着れるほど元気はないみたいだ。
呼びかけようとしたら、体を起こされて抱きしめられた。
もしかして三回目やるのかなと思ってたら、耳元で「一度しか言わない」と言われた。いったい何だろう、と体を固くしてしまう。
「愛してる。ミソラ」
聞いた。
確かに聞いた。愛してるって。
ソロも私と同じように、愛してるって確かに言った。
もう三回目とか頭から吹っ飛んだ。もうその言葉だけが頭を占めているのが解る。
「ね、ねえ、もう一度言って! ちゃんと私の顔を見て!」
「嫌だ」
「『嫌だ』じゃないよ~! そういうのは顔を見て言うんだよ!」
「絶対に嫌だ」
「も~!!」
いつもの仏頂面。でもよくよく見たら、目元が赤いから照れてるんだって解る。
本当に恥ずかしがりで、素直じゃない。でもそこも愛してるから、許してしまう。
惚れた弱みってやつだ。
「じゃあさ……」
数分後。
また衣装を着直した私たちは、改めて誓いのキスを交わした。
誰も見ていないけれど、月だけが私たちを祝福している気がした。