あの時と同じように、同じ種類のメテオがあっという間に消える。
二回目のメタモアーククルーはともかく、ギガントガッシュの住人たちは急に消えたメテオにあっけに取られていた。無理もない。二回目の自分らも信じられないのだから。
だが、イレイザーを発動した後の行動は、全員があっけに取られてしまった。
――GEL-GELが装備されているバズーカをメテオに向かって撃ったのだ。
「なっ!?」
後方で状況を常に確認していたラスタルが、思わずゴーグルを上げてGEL-GELを見てしまう。前回はもう一回イレイザーを使ったのだが、今度は全く違う。
バズーカは見事に命中するが、メテオをぐらつかせるだけで打ち上げたり破壊するまでには至らない。それを確認してから、GEL-GELは二発目を撃った。
今度は周りを巻き込んで大爆発した。それにより、同じ種類のメテオが核融合を始める。
「ビュウブームさん! もう一つ繋げてください!」
GEL-GELが空中でぼけっとしているビュウブームの名前を呼んだ。呼ばれた本人は慌てて連結するメテオを確認して、ナックルフレームで大きく殴り飛ばす。
メテオはさっきよりも大きな塊となって、ギガントガッシュの空から消える。ガッツポーズしてから、ビュウブームはGEL-GELが自分の名前を呼んだのに気がついた。
一回目の発動では、完全な機械のように成り果てていた。二回目では暴走と同じほどの力を発揮していた。つまり極限状態でなければ、あれは発動しないと思っていた。
だが三回目の今は、確かにGEL-GELは意識をはっきりとさせていた。自分の名前を呼び、正確にメテオを打ち上げたりしている。
一体何があったのだろうか。少しだけそれが気になったが、「ビュウ!」と自分を呼ぶ声で思考を戦場へと戻した。
GEL-GELの放ったイレイザーのお陰で、大分戦況はよくなった。約束された5分まで後もう少し。それが全員を奮い立たせ、抵抗力を強めていた。
そして。
「艦長! メテオ群が上手くまとまってくれました。主砲発射許可を!」
戦場の状況を常に確認しながら戦術を立てていたフィアが、メテオが集結している部分を指して発射許可を求める。確かにいい感じにまとまっている群体だ。
メテオの数や今のギガントガッシュの様子、そして約束された時間を確認すると、クレスは許可を出した。
「誤差修正はスターリアにやらせろ! 打ち上げる弾はタイプFだ!」
「了解。弾を装填して右角50で発射します!」
すぐにソーテルたちの手によって、タイプF――火メテオの核が埋め込まれた弾が装填される。狙っている塊はもう既に幾つか点火されていて、後一発で打ちあがりそうだ。
ビュウブームたちもそれが解ったか、なるべく多くのメテオを打ち上げようといくつもの塊をぶつけてもっと大きな塊にしていく。
発射口が、狙っている場所に向かって正確にあがる。誤差修正はスターリアとロゥが行ったため、狂いはほとんどないはず。そしてクレスの一声がこだまする。
「主砲発射! 撃てぇぇーっ!」
弾は狙いたがわず大きな塊へと決まった。そしてそれによって起こった核融合により、強力なロケットへと変わる。
着弾していないメテオは、ほとんどこの塊によって打ち上がった。大気圏を突破したメテオは、何らかの作用によって核だけの存在になり、ぱらぱらと落ち始める。
小さな核が降り注ぐ中、誰もが呆然としていた。しかし、誰かの喜びの声により、一気に歓声が沸きあがった。
ギガントガッシュは、メテオの攻撃をしのいだのだ。
しばらくは誰もが皆、勝利に酔いしれていた。あのメテオから星を守りきれたことによる高揚感が、共に戦った仲間を称え、手を握らせあっていた。
だが、ギガントガッシュの住民の一人が、GEL-GELと少女を見て、あっと息を飲んだ。
「え?」
最初GEL-GELはあのMETEOSモードからくる恐怖かと思ったが、その視線に篭る敵意に気づき、慌てて警戒態勢を取った。彼らは、自分を敵だと思っている。
ビュウブームたちも慌てて武器を構えようとするが、GEL-GELはそれを抑えた。彼らに向けられている敵意は、全て自分に向いている。余計な事はさせられなかった。
一触即発のこの空気の中で、GEL-GELはどうやって切り抜けるべきかを考えた。凶暴な所があるとは言え、彼らは無実の住民。銃を向けたくない。
だが銃を向けなければ、自分は彼らによってばらばらにされるだろう。そうすれば、今度はもう誰も拾ってくれない。本当に冷たい闇の中へ『帰ってしまう』。
(『帰る』?)
GEL-GELの脳内に、ノイズやゴースト共にあの映像が蘇った。実験の失敗によって破壊されていく、同じジェネシスナンバーたち。失敗作の烙印。プロジェクト凍結。
嫌な思い出が蘇り、GEL-GELは苦しそうに口元を押さえた。周りにどう見られているのかは解らないが、これだけは耐えられない。
余裕と見て取ったか、ギガントガッシュの住民が襲いかかろうとする。その時。
「退け! かの者は我の客だ!」
GEL-GELの後ろにいたはずの少女が前に立ち、ギガントガッシュの住民たち相手に一喝した。
住民たちは少女の一喝に対して頭を下げ、何か崇めるように敬っている。中には何かを祈っていたり、「姫様」と呼ぶ者もいた。
「……ってえ?」
「『姫様』?」
前情報として「皇子」や「姫」の事を聞いていたGEL-GELたちは顔を見合わせた。少女――姫はそんな彼らを見て、「そう言えば言っておらなんだ!」と笑う。
「我はこのギガントガッシュの民を導く役割にある姫なのだぞ」
……しばしの沈黙の後、それを聞いたGEL-GELたちは大きくぶっ飛びそうになった。
「……で、彼女が同行したいと?」
『はぁ。何か、『絶対に行くぞ!』って聞かないんですよね。メテオも交換条件に出されちゃいましたし』
とりあえず姫の取り成しで全面衝突は免れたが、その姫が「我も汝らの船に乗りたい」と言い出してきたのだ。
無論、GEL-GELたちだけでなくギガントガッシュの住民全員で説得しようとしたが、結構てこでも動かないガンコな性格らしく、「絶対乗る」と言って聞かないのだ。
一番最初に折れたのは配下とも言える住民たちで、最後の砦だったGEL-GELも「我を乗せないと攻撃するぞ!」と脅されて、とうとうクレスに相談となった。
最終判断を任されたクレスは、こめかみに手を当てながら通信してきたビュウブームに告げた。
「その姫君を出してくれ。直接彼女と話がしたい」
しばしの相談などの後、「我を呼んだか?」と姫が通信して来た。
「我が艦に乗艦を望む、その理由は何だ?」
「汝らの艦は、やがて宇宙にある災いに大きく関係する。我はそれを見届けたい」
その答えに、クレスはふむと顎を撫でた。
宇宙にある災い。おそらく大半はメテオスを思い出すだろうが、クレスは何となくそれ以外にも何かあるのではないかと思っていた。
行方不明になった弟。その弟に良く似たヘブンズドアの少年。廃棄惑星にて発見された謎のアンドロイド。そして最近艦内で見かけるという座敷童……。
全てが何かに繋がっているというのなら、今まで起きたこと全てが何らかの意味を持ち、大きな事件に繋がっていくのだろう。彼女の言葉も、絵空事とは思えなかった。
幸い、ここは民間人も何人か乗っているし、規律やら軍事機密などにうるさい者はいない。流石に大っぴらにすることは出来ないが、乗せるくらいなら大丈夫だろう。
「……解った、許可しよう。こちらの誘導にしたがって、メタモアークに乗艦してほしい」
クレスの言葉に姫が顔を輝かせ、GEL-GELが対照的にげっそりとした顔になった。
かくして、新たな乗員が加わったメタモアークはギガントガッシュを後にした。