METEOS・19

 それに気づいたのは、ギガントガッシュ人の中で2割ほど。それからメタモアークで待機中だったオペレーターだった。
「メテオ襲来!」
 響き渡る戦歌や、オペレーターの声。出撃する戦士たち。バックアップに回る者、前線に立ってメテオを相手にする者、遠目からメテオの様子を調べる者。
 メタモアークとギガントガッシュの民たちが、形こそ違えど同じ敵を相手に準備して回る。メテオは宇宙共通の敵。例え協力せずとも、戦うのは同じだ。

 宇宙基準時間午後2時24分。ギガントガッシュにメテオが襲来した。

 メテオが来たのはGEL-GELや少女にも見えた。
「……やばい!」
 ギガントガッシュの大地を砕こうとするメテオを見たGEL-GELは、急いで武器を構えなおして戦場に向かおうとするが、その腕を少女に捉まれた。
「あの、離してほしいんですけど」
「……汝は、あの空からの災厄に対して一人で抗うか?」
「え?」
 また解らない事を聞かれ、GEL-GELは首をかしげた。
 空からの災厄はメテオの事だろうが、一人で戦うつもりはない。ビュウブームたちも戦場に出ているだろうから、彼らの援護に回るつもりだが……。
 だがこの少女の言う「一人で抗う」というのは、そういう事を指している様には思えない。もっと別の――精神的な事を指しているように思えた。
(……って、考えてる暇はない!)
 現状を思い出し、GEL-GELは急いで戦場へと向かい、その後を少女がついていく。
「ちょっと!?」
「我も行くぞ。空からの災厄、見過ごすわけにはいかん!」
「えええ!?」
 慌てふためいてるうちに、少女はさっさとしがみついて「ほら、急ぐのだ!」とGEL-GELを急かす。
 ガンナーフレームでよかったと思いながら、GEL-GELは加速装置を起動させた。
「ラスタルさん、応答してください!」

『ラスタルさん、応答してください!』
 唐突なGEL-GELからのコールに、ラスタルは回路の半分が飛ぶかと思ってしまった。
「GEL-GELさん、一体どこにいたんですか!? 今……」
『メテオだったらこっちでも確認しました! 今そっちに向かってますので、そっちに伝えてください!』
 ラスタルはすぐにブリッジに繋いで、GEL-GELの帰還を知らせた。ブリッジはにわかに活気付き、クレスが「急いで戻って来いと言え」と伝えてきた。
 GEL-GELにそれを伝えようとするが、あっちの回線はどうなっているのか雑音が激しく何かひどい音がしている。
 ノイズを排除して拾うと、どうもGEL-GELは現地住民を連れているらしく、ぎゃあぎゃあと騒ぎながら向かっているようだ。
 やがて、「ちょっと待って!」「黙っているがいい!」とか言い合いが終わり、回線から知らない少女の声が飛び込んできた。
『5分粘れ! さすれば汝らに勝利が見える!』

「5分粘れだぁ!? 無茶な指示出してくれるぜあちらさんは!」
 テストしていたナックルフレームで応戦しながら、ビュウブームが呆れた声を出す。実質、泣き言に近いのだが。
 ギガントガッシュの住民たちが取り付いたりすることでメテオをどうにかしてくれているので助かっているが、メテオの数はやはり多い。
 地面に衝突するメテオの数も増えてきており、ギガントガッシュの大地に影響が出始めている。コメットが誕生する可能性も、高くなってきていた。
「いいじゃんいいじゃん。5分粘れば勝つんだよ!」
 その端っこでエアライドフレームを装備したままのアナサジが、大量にミサイルをばら撒く。ミサイルは全弾ヒットし、着実にメテオを傷つけている。
 楽天家の彼女の前向きな考え方で、ビュウブームは少しだけ体勢を立て直す。5分粘れば勝てるのなら、その5分に全力を尽くせばいいということだ。
 ギガントガッシュの住民たちもそれがわかったのか、さっきまでと比べると急に元気になってメテオに立ち向かっている。もはや、死すら恐れていない。
 そんな激戦の中、新たな高出力ビームがメテオを焼いた。GEL-GELが戦場にようやく到着したのだ。
「遅くなりました!」
 何か少女を背負っているようだが、今はそれを気にしている場合ではない。
「遅れた分だけ働けよ!」

「やっぱり苦戦は免れないか……」
 応戦状況を見て、GEL-GELはため息を付きそうになった。
 背中には少女を背負い、落ちてきそうなメテオに武器を当てていく。惑星上での戦いは初めてなので最初は戸惑ったが、すぐにこつを飲み込んだ。
 少女はと言うと、この激戦の中でも平気な顔でしがみついている。度胸が据わっているのか、現実と仮想の区別がついていないのか。まあ前者だろうが。
『ヤバイな……』
 通信を通して、仲間の焦り声が聞こえてくる。5分粘れば勝てると言うが、その5分後に何が起きるのか誰一人知らないのだ。言った少女本人でさえ。
 そんなものに頼り切って、本当に勝てるのか? だいたい彼女のはただの予測なだけで、現実にそうなるとは限らないのではないか? なら自分はどうする?
 焦る気持ちは照準に現れ、外れ弾が出るようになって来た。それによってますます焦り、照準がずれる。悪循環だ。
(どうすればいいんだ!? どうすれば……!!)
 力が。
 力がほしい。
 この状況をひっくり返すための力が。
 GEL-GELの隠されたスイッチ――METEOSモードが動き出さんとするその時。

「仲間を信じろ」

「!」
 少女の一言で、GEL-GELの意識が元に戻った。
「仲間を信じるって……」
「汝の仲間を信じろ。そしてその力を信じた上で、力を放て。さすれば、全てが上手く行く」
 根拠も何もない言葉だが、今のGEL-GELには何よりも心に響いた。絶対に全てが上手く行く。そう信じられる強さがあった。
 GEL-GELの目が髪と同じ桃色になり、がばっと胸から腹までが大きく開いた。その中にある、時と魂のレアメタルが激しく輝く。
(信じろ……信じろ!!)

「イレイザー、発動!!」