虹顔市の隣の市には、育ちのいい少女たちが通ういわゆるお嬢様学校がある。
私はその学校に通う高校二年生。仲の良い子たちとグループを作り、その中で平穏で幸せな生活を営んでいた。
そんな日常の中、今日はちょっとだけ変化があった。
「みなさーん、ちょっといいですかぁ?」
明るい声で自分たちに声をかけてきたのは、新聞部の一葉さん。彼女は取材と称していろんな場所を駆け回る、敏腕記者なクラスメイトだ。
そんな彼女が持ち込んできた「ちょっといいですか」。話題になりそうなネタを持ち込んできたと見込んで、その場にいた全員――と言っても私たちのグループしかいないのだが――が彼女の周りに集まった。
「一葉さん、何か面白い話でも?」
「私たち、是非ともお聞きしたいわ」
お嬢様と言っても一介の少女。噂話には弱い物。私も興味を引いたので、一葉さんに近づいて次の言葉を待った。
その一葉さんはにっこりと笑って、ごそごそと懐から封筒を取り出した。
「ふふーん、今回はうちの隣の市である虹顔市! その虹顔市の素敵な殿方……イケメンと言えば、誰でしょうか?」
「あら、虹顔市の素敵な殿方と言えば『ウィズダム』の方々でしょう?」
彼女の話を聞いていた少女の一人、ほのかさんがうっとりとした顔で言う。その隣で真由美さんも頷いていた。
虹顔市の高級ラウンジ、ウィズダムはここでもよく聞く有名な場所だ。曰く、そこで働く男たちは見目麗しいだけでなく性格も良く、夢のようなひと時を味わえる、らしい。私も何回か写真でその従業員たちを見たが、全員イケメンと言うには足りないほどの美しい男性たちだったっけ。
そのほのかさんの指摘をちっちっち、と指を振ることで否定する一葉さん。
「それがですね~、最近の虹顔市の中では、教育地区を中心に活動している『仮面ライダー屋』がアツいらしいんですよ!」
「「仮面ライダー屋??」」
思わず声を合わせてしまう私たち。その反応に良くしたのか、一葉さんは封筒から何枚もの写真を出した。
「まあ……」
誰かがため息をつく。
それも無理はない。写真の男性たちはみな若々しく、それでいて顔立ちも整っていて魅力的だ。写真の中の男たちは子供たちの相手をしていたり、大学生の手伝いをしていたりと、様々な作業をしている。
「この仮面ライダー屋の皆さんはいわゆる何でも屋で、お困り事を何でも解決してくれるって話らしいです! それだけでなく、自主的に教育地区のパトロールなんかもしてるって噂なんですよ~!」
「まあ、素敵」
真由美さんが一葉さんの出した写真の一枚を拾って、感嘆のため息をつく。手に取った写真には、グレーブルーの髪の青年がパトロールしている姿が写っていた。
お嬢様学校となると男と言う存在は少し遠い存在。それゆえ、こうして若く顔が整っているというだけでも盛り上がってしまうものだ。既に真由美さんとほのかさんは、一葉さんと一緒に男たちの写真を見てはきゃっきゃと騒いでいる。私も合わせて覗いてみるが、何故か三人のように盛り上がることはできなかった。
「そ・れ・で♪」
一通り見終わってから、一葉さんがリズミカルに言う。
「その仮面ライダー屋が揃って手伝っているイベントが、次の休みの日にあるらしいです! 見に行きませんか?」
そんなわけで。
私達はその仮面ライダー屋が来るらしいイベントに参加しようと虹顔市にやって来た。
しかし虹顔市はいくつもの地区エリアがあるほど広い。集合場所を中央駅にすればまだよかったのだが、勢いで現地集合にしてしまったため、私は虹顔市のどこかに迷い込んでしまったのだった。