40代のおばちゃんエージェントと28歳のゲーム廃人の昔のゲーム話

「ちょっとルーイ、まだ終わんないのかい?」
「あー、しつけーな。まだ終わらねえよ」
「こっちはもう30分は待ってるんだけどね。せめてどこかで区切りをつけとくれ」
「ちっ、しょうがねーな……。今デイリー片付ける。それまで待ってろ」
「はいはい。じゃ、そのプレイ見せてもらおうかねえ」
「あ? 人のプレイ見ててもおもしろくねーだろ」
「そうでもないよ。子供んころから、人のプレイは見てて面白かった」
「子供のころ? ……あー、そうか。ばあさんはファミコン世代か」
「そういうこと。あんたが生まれる前からゲームはあったんだよ」

「ゲームの進歩ってのは凄いもんだね。ドット絵にぴこぴこの時代から、高画質高音質だ」
「オンゲなんて夢のまた夢だったろ」
「だね。対戦ゲームなんてゲーセンか、友達の家に遊びに行ってってのが当たり前だった。
 波動拳や昇竜拳出せただけでヒーローだったよ」
「超単純じゃねーか。お、即死コンボ繋がった」
「今のあんたのプレイ見たら腰抜かすだろうね」

「あと2戦ってとこか」
「お疲れ」
「これが終わったらあとは」
「それ以上やるならコード抜くよ」
「……それやったらシメる」
「ははは、冗談だよ。それにしても、この手の脅しは今の時代でも通じるもんだね」
「結局、電源がねーと動かねーからな、ゲームってのは」
「親に強制的に電源切られて、データ吹っ飛ぶのもよくあったわ」
「セーブしろよ」
「できると思う? あの頃はパスワードが精一杯。しかも文字が読みにくくて間違えることもザラだったんだ」
「うっわ、クソだりぃなそれ」
「そんなあんたにもっとだるくなりそうな名言を教えてやろう」
「何だそりゃ」
「『ゲームは一日一時間』」
「やってらんねー。てか知ってる」

「さっきの話に戻るけどさ」
「どこまでだよ」
「他人のプレイは見てて面白いってところ」
「それか」
「ルーイは実況プレイ動画とか見ないのかい?」
「参考になる動画は見るな。でもシロートがやるやつは見ねー。つまらねーし」
「私は面白そうなら見るけどね。昔を思い出す」
「そんなに見てたのかよ。一人用のゲームでもか?」
「見てた見てた。人がやるってだけでも面白く見えたもんだよ。自分じゃやらないプレイしたりするしね」
「そんなもんかよ」
「実際ルーイのプレイは見てて面白い」
「ばあさんがこのゲーム知らねーからだろ?」
「それもあるね。ミリしらだっけ? 何も知らないからこそ面白く見えるのもあるもんさ。あと人がつけた仲間の名前とかも面白かった。漫画のキャラの名前とかね」
「あーそれ、好きな奴の名前入れててバレるってやつだろ?」
「そうそう。私もやったね」
「マジか」

「さっきの技、裏技みたいなもん?」
「あ? 解ったのか」
「何となくね。昔もいろいろ裏技あったもんだ」
「要はゲームのバグとか仕様をそのまま利用したもんだろ」
「そういうこと」
「今じゃ速攻で解析されたりするからな。裏技と言うか小技、テクニック扱いだ」
「攻略サイトでささっとまとめられるんだっけか」
「そういうことだ」
「昔はそういうのがなかったから、攻略本や子供のネットワーク頼りだったね。ま、攻略本も当てにならなかったり、嘘の裏技を教えられたりしたもんさ」
「適当じゃねーか」
「そうだよ。でもそう言うのも子供たちのネットワークの醍醐味でね。誰もが嘘だと解ってても試した。そんな時代だった」
「俺には解んねーな。そう言うの」
「騙される前に調べるってか。それも時代だね」

「……おっし、これでデイリー終わりだ」
「お疲れ」
「で、何の用だ」
「……本気で言ってんのかい!? ご飯だよご飯! もう2人は食べ終わっちゃって、残るはあんただけ!」
「……げ」
「『げ』じゃないよ。ちゃんと作ったんだから、全部食べるまで帰るつもりはないよ」
「んなもんエナドリとスナックで」
「それやったら明日強制健康診断だよ。いやぁ、あんたのカルテ見るの楽しみだわぁ~」
「……」
「あんたの選択肢は2つ。大人しく冷めたご飯を食べるか、明日健康診断で強烈なお説教を食らうかだ」
「……どっちも嫌だっつったら?」
「縛り付けて生野菜食わせる」
「だっりぃぃぃ~~~……」