「ちょっとルーイ、まだ終わんないのかい?」
「あー、しつけーな。まだ終わらねえよ」
「こっちはもう30分は待ってるんだけどね。せめてどこかで区切りをつけとくれ」
「ちっ、しょうがねーな……。今デイリー片付ける。それまで待ってろ」
「はいはい。じゃ、そのプレイ見せてもらおうかねえ」
「あ? 人のプレイ見ててもおもしろくねーだろ」
「そうでもないよ。子供んころから、人のプレイは見てて面白かった」
「子供のころ? ……あー、そうか。ばあさんはファミコン世代か」
「そういうこと。あんたが生まれる前からゲームはあったんだよ」
「ゲームの進歩ってのは凄いもんだね。ドット絵にぴこぴこの時代から、高画質高音質だ」
「オンゲなんて夢のまた夢だったろ」
「だね。対戦ゲームなんてゲーセンか、友達の家に遊びに行ってってのが当たり前だった。
波動拳や昇竜拳出せただけでヒーローだったよ」
「超単純じゃねーか。お、即死コンボ繋がった」
「今のあんたのプレイ見たら腰抜かすだろうね」
「あと2戦ってとこか」
「お疲れ」
「これが終わったらあとは」
「それ以上やるならコード抜くよ」
「……それやったらシメる」
「ははは、冗談だよ。それにしても、この手の脅しは今の時代でも通じるもんだね」
「結局、電源がねーと動かねーからな、ゲームってのは」
「親に強制的に電源切られて、データ吹っ飛ぶのもよくあったわ」
「セーブしろよ」
「できると思う? あの頃はパスワードが精一杯。しかも文字が読みにくくて間違えることもザラだったんだ」
「うっわ、クソだりぃなそれ」
「そんなあんたにもっとだるくなりそうな名言を教えてやろう」
「何だそりゃ」
「『ゲームは一日一時間』」
「やってらんねー。てか知ってる」
「さっきの話に戻るけどさ」
「どこまでだよ」
「他人のプレイは見てて面白いってところ」
「それか」
「ルーイは実況プレイ動画とか見ないのかい?」
「参考になる動画は見るな。でもシロートがやるやつは見ねー。つまらねーし」
「私は面白そうなら見るけどね。昔を思い出す」
「そんなに見てたのかよ。一人用のゲームでもか?」
「見てた見てた。人がやるってだけでも面白く見えたもんだよ。自分じゃやらないプレイしたりするしね」
「そんなもんかよ」
「実際ルーイのプレイは見てて面白い」
「ばあさんがこのゲーム知らねーからだろ?」
「それもあるね。ミリしらだっけ? 何も知らないからこそ面白く見えるのもあるもんさ。あと人がつけた仲間の名前とかも面白かった。漫画のキャラの名前とかね」
「あーそれ、好きな奴の名前入れててバレるってやつだろ?」
「そうそう。私もやったね」
「マジか」
「さっきの技、裏技みたいなもん?」
「あ? 解ったのか」
「何となくね。昔もいろいろ裏技あったもんだ」
「要はゲームのバグとか仕様をそのまま利用したもんだろ」
「そういうこと」
「今じゃ速攻で解析されたりするからな。裏技と言うか小技、テクニック扱いだ」
「攻略サイトでささっとまとめられるんだっけか」
「そういうことだ」
「昔はそういうのがなかったから、攻略本や子供のネットワーク頼りだったね。ま、攻略本も当てにならなかったり、嘘の裏技を教えられたりしたもんさ」
「適当じゃねーか」
「そうだよ。でもそう言うのも子供たちのネットワークの醍醐味でね。誰もが嘘だと解ってても試した。そんな時代だった」
「俺には解んねーな。そう言うの」
「騙される前に調べるってか。それも時代だね」
「……おっし、これでデイリー終わりだ」
「お疲れ」
「で、何の用だ」
「……本気で言ってんのかい!? ご飯だよご飯! もう2人は食べ終わっちゃって、残るはあんただけ!」
「……げ」
「『げ』じゃないよ。ちゃんと作ったんだから、全部食べるまで帰るつもりはないよ」
「んなもんエナドリとスナックで」
「それやったら明日強制健康診断だよ。いやぁ、あんたのカルテ見るの楽しみだわぁ~」
「……」
「あんたの選択肢は2つ。大人しく冷めたご飯を食べるか、明日健康診断で強烈なお説教を食らうかだ」
「……どっちも嫌だっつったら?」
「縛り付けて生野菜食わせる」
「だっりぃぃぃ~~~……」