40代のおばちゃんエージェントと20歳のナルシスト画家が絵を描くお話

「為士、これ使えるかい?」
「ん? これはクレヨン……クレパスか。しかも随分と古いな」
「倉庫掃除してたら見つけたんだよ。捨てるのももったいないし、あんたなら使えるんじゃないかって思って、持ってきた」
「まあ、俺はどのような画材でも使いこなす自信はあるが」
「引き取ってくれるかい?」
「いいだろう。ちょうどいい感じに思いついたものもある。これを使って描いてみるとしよう」
「せっかくだし私も何か描いてみるかね」
「俺のキャンバスを使うか?」
「いや、一応画用紙持ってきた」

「さすがだね、あっという間に絵になってきた」
「当然だ」
「お、珍しい。ちゃんと返してきた」
「誉め言葉は拾える」
「都合のいい耳だね」
「何とでも言え。俺の素晴らしさを愛でる言葉は一つも漏らさん」

「……休憩でも入れるか」
「お、いいタイミングだ。紅茶入れたんだよ」
「ほう、気が利くな」
「とはいってもティーバッグのお茶だけど」
「気が利いてないな! ちゃんとしたのを持ってこい! 執事が入れたやつだ!」
「手のひらドリル凄いね!?」

「腹は……減ってても気づかないか」
「……」
「じゃあ私が勝手に作って食べるか。台所は……あ、一応あるのか。冷蔵庫もある」
「……」

 ぐ~

「腹の虫は正直だね。とりあえずサンドイッチ用意しておいたから、気が付いたら食べな」

「まだ完成しないのか……」
「……」
「さすがに集中してるか」
(為士のいいところだね。集中力が本当に凄い)
(その集中力の先が変な方向に行く時もあるけど……、本当の意味でねじ曲がったりはしてない)
(こいつにとって、自分と自分の絵が中心。あとは自分を取り巻き、輝かせるアクセサリーってことか)
(問題はその中心が揺るぐ可能性があるって事だけど……)
(……その時は、マッドガイの二人が積極的に力になってくれるはずさ)
(何せ「力」の契約だしね)
「……何か言ったか?」
「いや別に。そろそろ完成かい?」
「見えてきた。待っていろ」

「ところでそっちは出来たのか」
「一応出来たけど、あんたに比べればねぇ」
「当然だ」
「それでも小さい頃は父の日に父さんの絵を送って喜ばれたもんさ」
「なるほどな」
「あんたは父の日や母の日に、何を描いたんだろうね」
「……さあ、解らん」

「完成だ。見ろ、『古きを愛でる俺』!」
「ほー、古きってのはクレパスからアイディアを貰って来たのか」
「解るか。古いクレパスであっても余すところなく使い切る俺の素晴らしい事!」
「普段とは違う画材だから大丈夫かって不安だったけど、杞憂だったね」
「当然だ。俺の美しさを再現できるものなら、何でも使うし、何でも使える」
「昔私が小さいころ使ってたやつだけど、私は使えなかったなぁ」
「……おい」
「何?」
「まさか捨て場所に迷って俺に渡してきたんじゃあるまいな!?」
「てへ、バレた!」