40代のおばちゃんエージェントがカボチャ料理を配って歩くお話 - 3/3

「お帰りなさいませ、ご主人様」
「ただいま、レオン」
 戻ってきた時は昼下がり。仮面カフェの客足も落ち着いていた。残しておいたカボチャグラタンも無くなっていたので、ランスはちゃんと引き取りに来たようだ。これで自分が作ったカボチャ料理はライダー全員に行き渡ったことになる。
 と、そこでレオンが思い出して手を叩く。
「そう言えば、先ほど戴天さまと宗雲さまがお礼の電話かけてきましたよ」
「そうか。あいつらも食べたんだね」
 ……そこまで言って思い出した。
「悪い、レオンたちの分残すの忘れてた!」
 ライダーの事ばかりに気を取られてて、レオンをはじめとした仮面カフェのスタッフの分を忘れていた。作ってる時は少しは「余ったらスタッフにも回そう」と考えていたのだが、行動している時は頭からすっぽ抜けるものだ。
 しかしレオンはにやりと笑って。
「そう言うと思いまして、スタッフ分はこっそりと取り分けておきました。今日働いてくれたスタッフには既に渡してありますよ」
「マジか……」
 そう言えば車に積み込む際、「こんなに少なかったかな」と思った。その前に抜いたことになるから、この執事、なかなか抜け目がない。
「あと私の分は気にしなくてもいいですよ。試食で十分です」
「うーん」
 それでいいのだろうか。しかし本人がこれで十分と言うのだから、それ以上追及するのは野暮なのだろう。
 何より数日はもう料理したくない。そのくらいたくさんのカボチャを相手にしたのだ。
 はぁとため息をつくと、レオンがふふっと笑った。
「美味しかったですよ。恐らく皆様もそう思ってくれるはずです」

 その日。
 ライダーたちは彼女が作ったそれぞれのカボチャ料理を口にした。
 素朴な味、励まされる味、寄り添う味、元気になる味。それぞれ感想は違っていたが、最終的に彼らは同じような感想を口にした。

 ――あったかい味だ、と。