生命の社たる太陽樹は一つだけではない。イストラカンにあるのもそうだし、太陽街にあるのもそれである。
全てはあの古の大樹ユグドラシルから来ている、との伝説だが、真相は謎のままだ。
だが太陽樹を育て、管理できるのは大地の巫女のみだ。故に、その存在は太陽樹と並んで重宝され、いざと言う時は太陽樹のない街まで遠出する事もある。
大地の巫女リタが無理を承知で太陽少年ジャンゴについて来たのは、それが理由である。
「だめですね。芽吹いてはいるんですけど、育つほどのお力が残ってません」
「そうか……」
かつて太陽樹があったという広場で、リタは首を横に振った。
この街も暗黒に閉ざされているので太陽樹の力で浄化したいのだが、その太陽樹が育つほどの太陽の力が届いていないのだ。
どうにかして太陽の光を浴びるなり何なりすれば、太陽樹も育ってくれるのだろうが……。
「何かいい手はないのかなぁ」
うーんと唸るジャンゴの横で、おてんこさまが複雑な顔をして「手はある」と答えた。
「え!?」
「本当ですか!?」
ぱっと顔を輝かせた二人だが、おてんこさまの「太陽樹を活性化させる方法」を聞いて、思いっきりのけぞりそうになってしまった。
要するに、太陽樹が元気になるほどに太陽の力が送り込まれればいいのだから、大地の巫女を介して大量のエネルギーを注ぎ込めばいい。
ただ問題なのは、その方法が性行為――すなわちセックスだと言う事。
しかも、大量の太陽のエネルギーが必要なので、ソルジャンゴへとトランスしてからのものが望ましいと言う事。
……流石にこんな方法を提示されて、のけぞらない者はいないだろう。
「や、やっぱり他の方法で……」
「……いいですよ」
慌てて取り繕うように叫ぶジャンゴの腕を、リタがそっと掴んだ。
「あの、わ、私は……その方法でも、いいですよ……」
顔どころか掴んだ手まで赤く染まっているように見えたのは、気のせいではないだろう。
人の住んでない家に上がりこみ、ベッドに座る。ジャンゴはもう既にトランス済みだ。
「そ、それじゃ、行くよ」
「あ、あの!」
大地の衣に手をかけた瞬間、リタが切羽詰ったように声を上げた。
「何?」
「じゃ、ジャンゴさまはいいんですか? その……相手が私で……あの……」
最後の辺りはどもっているが、ジャンゴは何が言いたいのかがすぐに解った。
服を脱がそうとした手をそっと肩に持って行き、あやすようになでる。それだけで震えていたリタの肩がだいぶ大人しくなる。
「その、僕も……するんだったら、リタがいい。だ、だって、君の事、好きだし」
普段なら言えないはずの言葉がするりと口から出る。何でこんなに素直に言えるのか。それはジャンゴにも解らなかった。
「……していい?」
改めてジャンゴが問うと、リタはこくりとかすかにうなずいた。
ごくり、とつばを飲み込んでから、ジャンゴは肩に置いていた手をリタの服にかける。
大地の衣をさっと脱がすと、今まで見たことがなかったリタの柔肌が露になった。恥ずかしそうに顔を背けるのを見て、顔が赤くなる。
ジャンゴは全裸ではないが、すらりとしたボディラインがはっきりと出ている。そしてリタは、今ジャンゴが脱がしたので全裸だ。
「は、恥ずかし……んっ」
照れるリタの唇をそっと奪い、その勢いでベッドへ押し倒す。角が当たらないように角度を変えると、自然と舌と舌が絡み合っていった。
キスすら初めての二人だったが、深い口付けがどんどん性的快感を呼び覚まし、自然と身体を寄せ合っていく。ジャンゴの手が、リタの胸に触れた。
かすかな膨らみでしかないものでも柔らかさはかなりのモノで、ジャンゴはそのまま包み込むように触れる。
「ん…はぁ……っ」
糸を引きながら唇を離すと、リタの口から今まで聞いたことがない甘い声がこぼれた。
「じゃ、ジャンゴさま……、私、小さ……あっ」
その辺りの言葉は無視して、鎖骨の辺りからキスを落としていく。幾つか赤い痕を残した時、ジャンゴは頭から何かを舐める音を聞いた。
視線だけを上げると、いつの間にかリタが自分の角を咥え込んで舐めている。くちゅくちゅという卑猥な水音は、ジャンゴの身体を熱くさせていく。
舌をも使って愛撫していくうち、ぴくぴくと股間の辺りがうごめいた。リタもそれに気づいたのか、手がするっと伸びて股間にあるモノに触れた。
「あっ……」
間違いなくそれは、勃起したジャンゴ自身だった。ソルジャンゴ状態でどうしてこうなってるのかは解らないが、それは確かに高々と勃っていた。
腰を一回引っ込めてから、リタの足を少し強引に広げる。リタの女の部分もしとしとと濡れていて、深々と入り込めそうになっていた。
「それじゃ、行くよ」
一つ深呼吸してから、一気にリタを貫く。
「くっ……!」
「んっ! …あ、ああ……っ」
誰も受け入れた事のない場所は狭くてジャンゴを思いっきり締め出そうとするが、それでも強引に押し進める。繋がった場所から、赤いものが流れていた。
初めて貫かれたリタの顔が苦痛に歪むが、ジャンゴにはどうする事もできない。ぽろぽろこぼれる涙をキスでぬぐい、腰を動かす。
腰が動くたびに、抱きついてくるリタの手がぴくぴく動いた。
「い、痛い……?」
「あ……ん……、…大丈夫……。ジャンゴさまの……だから……あぁぁ……ん!」
苦痛と快感が入り混じった顔のリタを見て、ジャンゴは激しく突き始める。速度が上がっていくに連れ、色艶めいた喘ぎ声が多くなってきた。
そして、とうとう二人は限界を超えた。
「…くっ……リタぁ……あああっ!」
「ジャンゴさ、ま……ぁ、あぁぁぁぁ……!」
次の瞬間、ジャンゴは白濁した液をリタの中に全て吐き出した。
「で、本当にこれで上手く行ったのかなぁ……」
リタの着替えを見ないように背中を向けながら、トランスを解いたジャンゴは頭をかく。
結ばれたのは嬉しいがこんな恥ずかしい事までやった以上、結果がないのはかなり嫌だ。
「さあ?」
対するリタはのろのろと着替えながら首をかしげる。動きが遅いのは、やはりさっきまでの行為が少しきつかったからだろう。
「大丈夫?」
「ええ……。ちょっと痛いですけど」
痛い、の言葉にジャンゴの表情は陰る。だが、そんな彼をリタはそっと後ろから抱きしめてきた。
「でも幸せです……よ」
その一言に、ジャンゴは顔を赤らめて「僕もだよ」と答えた。
翌日。太陽樹が驚きの成長を見せ、街の人を驚かせたが、ジャンゴたちはその理由を黙して語らなかった。