寂しい気持ち・10日目 - 2/2

 リタが目を覚ました時は、もうすぐ夕方になりそうな頃だった。
「寝ちゃった……」
 あくびをかみ殺していると、ようやく自分の立場に気がついた。
「! ジャンゴさま!?」
 ベッドに彼の姿はなかった。一体どこに行ったのだろうと慌てて立ち上がると、まばらに響く包丁の音が耳に入った。
 音に導かれて台所に行くと、ジャンゴが「剣とは違うんだよなぁ…」とぼやきながら料理をしている。びっくりして立っていると、ジャンゴはすぐに気がついた。
「あ、おはよう……じゃないかな? もうすぐ夕方だし」
「あの…」
「座ってて。もうほとんど出来てるから」
 久しぶりに見たジャンゴの笑顔に、つい顔を赤らめながらリタは椅子に座った。その様子にまた笑いながら、ジャンゴは出来上がった料理を運んでくる。
 運ばれる料理の質と量にリタは首をかしげた。
「あの、多すぎるし、豪華すぎませんか?」
「え? そんなに多い? でも普通じゃないかな。

 ……誕生パーティーをするには」

「え?」
 リタの目が丸くなる。誕生パーティー? 誰の?
 向かいの席に座りながら、ジャンゴはちょっと顔を赤くして説明した。
「あのさ、もう一ヶ月近くも前だけど、あの時僕はいなかったし、その、どうせ二人きりなんだから、改めてお祝いしようかって思ってさ」
「……もしかして、私のですか?」
 リタが聞くと、ジャンゴはますます顔を赤くしてうなずいた。
「……プレゼントはこないだのあれって事で。駄目かな?」
 ジャンゴに負けず劣らず顔を真っ赤にしたリタは、切れんばかりに首を横に振る。
「ありがとう」
 ジャンゴは顔を赤くしたままにっこりと笑う。
 ジュースを注いで、二人はかちんとコップをぶつけた。

「ハッピー・バースディ」