流星長編1

All in One・9

 ――時間は少しだけ遡る。 野ざらしになったディーラー本拠地跡を、アシッド・エースが歩いていた。「本当に何にもなくなったんだな」 ノイズムすらいなくなった一帯を見回し、深く息をつく。数年前まではここで暮らし、ここでいくつもの罪を重ねてきた。…

All in One・8

 極度の疲労を抱えたまま、ミソラはふらふらとステーションに戻る。 もう視界もぼやけて意識もうつろな状態。この状態で帰れるかな、と思っていると、とうとう足がもつれた。「う……」 そのままばたりと倒れるかと思ったが、誰かが抱きしめる形で支えてく…

All in One・7

 ソロが出て行った後、ミソラは慌ててハンターVGを取り出す。スバルたちにメールを送る事で、ソロを止めようというわけだ。(平日だけどいいよね。何せブライがKNステーションを破壊するんだから!) 彼はそんな事を一言も言っていないのだが、ミソラは…

All in One・6

 響ミソラ。八月二日生まれの11歳。 父親は早い時期に他界し、母子家庭だった。母は病気がちで、その母を励ますために歌を歌い始めたらしい。 母からオーディション参加を勧められ、その時宝物である愛用のギターをプレゼントされたと言う。 オーディシ…

All in One・5

「そうか、盗られちゃったか。……仕方ないよ。あれは要だけど、ないとどうしようもないわけじゃない。取り返すことに専念した方が前向きさ。 ……うん、ありがとう。残り二つ、守り抜かないとね。ちょうど式典準備も始まった事だしさ。警備は厳重に頼むよ」…

All in One・4

 ステルスボディの限界、それはサテラポリスにブライ襲来を知らせる時でもあった。 どこに潜んでいたのかわらわらと湧いて出るバトルウィザードを一蹴しながら、ブライはまだ建設中のKNステーションへ急ぐ。「目標を肉眼で確認!」「遅い」 バトルウィザ…

All in One・3

 グリューテルム博士の言葉に、エア・ディスプレイを見ていた人々がさっきよりも大きな歓声を上げる。 素晴らしい、素敵だなど口々に博士を褒め称える人々の中で、ソロはじっとエア・ディスプレイを凝視していた。(ブラザーバンドやレゾンを強化したシステ…

All in One・2

「やっぱり、ムーのテクノロジーか……!」「ダ……!」 オークションに出されるはずの商品。 それは今、あの乗客者ではない少年――ブライ(ソロ)の手にあった。 ――ソロがこの船に乗り込んできたのは、3日前のことだった。 監視していたムーの遺跡の…

All in One・1

   ――――――さあ、ドラマを始めよう。   太平洋を、一隻の豪華客船が行く。 外見だけで「一般人お断り」なその船は、約一ヶ月間の船旅を予定しており、今のところたいした問題もなく海を進んでいた。 三…