マルティナはイシの村についてあまり知らない。そもそも、その場所に村がある事すら知らなかった。
知っているのは、イレブンはそこで拾われて育ったという事。ウルノーガに取り付かれた父の命令で、焼き払われてしまった事。
そんな村に一度寄ろうと言い出したのはイレブンだった。止める理由はない。育った故郷に戻りたいと言う気持ちは、誰にでもあるものだ。それが焼き払われた場所でも。
……なのだが。
「あっ」
何かの予兆か、イレブンの靴紐が切れた。
「大丈夫ですか?」
セーニャが駆け寄るが、残念ながら靴紐はホイミでは直せない。かと言って、ここまで来て靴紐を買いに戻るわけにもいかない。
カミュたちも靴紐の予備を持っていない。困っていると、ベロニカが自分のおさげを解いた。
「しょうがないわね。あたしとセーニャのリボンで応急処置しましょ。セーニャ、リボン出して」
「はい」
「……ごめん」
イレブンが頭を下げた。
二人分のリボンで、どうにか応急処置はできそうだ。ただ、しばらく時間がかかるだろう。
イレブンもそれが解ったらしく、ロウの方を向いた。
「じいちゃん、皆連れて先に行ってくれる? 村の皆はびっくりするだろうけど、大丈夫だと思うから」
靴紐が切れたイレブンとそれを応急処置している姉妹を置いて、マルティナたちはイシの村にやってきた。
村は今だ襲撃の爪痕が残っている状態で、村人たちはせっせと復旧作業に勤しんでいる。しかし若手が少ないからか、そのペースは遅いようだ。
さてイレブンの家は、と辺りを見回していると、赤いバンダナの少女がこっちにやってきた。
「グレイグ将軍!」
「む?」
エマだった。命の恩人でもあるグレイグを目ざとく見つけ、挨拶に来たようだ。
「いつぞやはありがとうございました」
深々と頭を下げるエマ。対するグレイグは女性慣れしていないのも手伝って、困り顔で「い、いや、それほどでもない」と返す。
「照れんなよおっさん!」
「照れていない!」
茶化すカミュ。グレイグの顔がますます渋くなるのを見て、シルビアは「やれやれ」とため息をついた。
和やかな空気の中でひとしきり笑った後、ロウが改めて辺りを見回した。
「復興作業は、あまり進んでないようじゃな」
ロウの指摘にエマの顔が少し暗くなった。
「村全体で頑張ってるんですけど、さすがに人手が足りないです。人が呼べればいいんですけど……」
「むう、そういう事なら言ってくれれば兵を派遣したのだが」
グレイグが渋い顔で言う。村を焼き払ったことに責任を感じている彼らしい。
しかし、デルカダールへの不信はまだくすぶっている状態なので、それも難しいだろう。こればかりは時間という薬が必要だ。
「あら、だったらアタシたちも協力しましょ! ずっとって言うわけにはいかないけど、今日一日ぐらいなら手伝えるわよ」
シルビアの提案に、反対する者は誰もいなかった。
と言うわけで、それぞれがイシの村復興作業に取り掛かる事になった。
グレイグとシルビアは主に重い瓦礫の片付け、カミュは家屋の修復、ロウは復興に必要な素材をまとめて村長と交渉となった。
マルティナはと言うと、瓦礫の片付けをすると周りから「女子がそんな事しなくてもいいから」と周りに止められてしまっていた。
「私は平気ですから」
「いいからいいから! 若いねーちゃんにそういうのやらせたら、俺がかみさんにどやされちまうって!」
「はぁ……」
優しさが微妙にずれているのも困ったものだ。マルティナはやる事をなくしてしまい、仕方なく村を歩き回ることにした。
少ないながらも子供たちが元気に駆け回り、そんな子供たちを草木や風が穏やかに見守っている。遠くでは、馬がのんびりと草を食べていた。
どこにでもある平和な村だ。ただ一つだけ違うのは、ここで勇者が育ったという事。
「あの」
唐突に声をかけられた。
声の方を向けば、さっき会った赤いバンダナの少女――エマがやや厳しい目つきで立っていた。
「何?」
「少し、話しませんか?」
ここじゃちょっと、とエマに連れていかれた場所は、村から少し離れた場所だった。イレブンは「神の岩」と言っていた場所だったか。
何を話すんだろうと内心首をかしげていると、エマが真剣な顔で「イレブンに何かありましたか?」と詰め寄ってきた。
「え? 何かも何も……」
「そんなわけないでしょう。イレブンの顔見ましたか? あれは絶対に何かあった顔です。生まれてからずっと一緒だったんだから解るんです!
仲間の貴女が気づいてないなんてどうかしてます!」
「それは……」
気づいていなかった。
でも大樹に行く前から、イレブンには違和感のようなものはあった。外も中も全く同じイレブンなのに、一人だけ先を見てしまったような雰囲気があった。
その後、大樹やデルカダールでいろいろあったからそっちの方に気を取られ、イレブンの変化に気を向けていられなかった。本人の顔に注意を向ける余裕もなかった。
そして、いつしか忘れていた。こうしてエマに指摘されるまで、イレブンの顔や変化の事をすっかりと忘れていたのだ。
「……ごめんなさい」
頭を下げても、エマの不満は消えていないようだった。
「本当に大丈夫なんですか? イレブン、何か拙い事になってるんじゃないですか? 仲間がしっかりしてないんじゃ、イレブンだって大変だと思いますよ!
大体貴女、本当にイレブンの仲間なんですか? 足引っ張ってるだけで、何もしてないんじゃないですよね?」
「そ、それだけはないわ! 私にとって、イレブンは弟のようなものだもの!」
「……本当に?」
エマの視線が一段と鋭くなった。
歴戦の勇士のマルティナですら冷やりとするその視線は、迂闊な返事を許していない。彼女の望むような返事でなければ、何をされるか想像もつかない。
「そうよ。弟のように可愛がってるつもり。……というか、私たち全員にとってイレブンは勇者でもあって、弟のような存在でもあるわ」
「ふぅ~ん……まあ信じますけど」
私の方がイレブンの事を解ってますしね。
そう付け加えた彼女の視線は、まだ緩んでいなかった。
エマから解放された後、マルティナはとぼとぼとイレブンの家へと歩いていた。
頭の中では、さっきの会話……特に自分の言葉がぐるぐると回っている。
(そうよね、弟のようなものよね。間違ってない。間違ってないわ)
心の中で何度も言い聞かせる。
それでも、心の奥底でそれを認めたくないと叫んでいる「何か」があるのも解っている。
(いっそ私とエマちゃんの立場が逆だったら)
頭の中に浮かぶ暗い考えを、慌てて消した。時はそんな風に流れなかった。そしてもしそんな風に流れたとしても、自分はエマのようにはなれない。
それでも……。
「マルティナ!」
沈みそうな思考は、聞き覚えのある明るい声で中断された。いつの間にかイレブンの家近くまで来ていたらしい。
遅れていたイレブン、ベロニカ、セーニャだけでなく、シルビアとカミュも来ていた。2人とも作業は終わったようだ。
「遅くなってごめん。結局靴紐、買い直すことにしちゃったよ」
「あら、わざわざ町まで買いに行ったの~? それにしては早かったじゃない」
「ルーラで飛んできたんだよ。ルーラの事、すっかり忘れてたんだよね……」
「イシの村に行く間に思い出したのよ! ほんとぼーっとしてて頼りないんだから!」
ぷりぷりと怒るベロニカに、面目ないと照れ笑いを浮かべるイレブンに、皆の顔がほころぶ。マルティナも釣られて笑おうとしたが、顔が言う事を聞いてくれなかった。
「マルティナさま、どうしました?」
最初に気づいたのはセーニャだった。小首をかしげて、こっちの顔を覗き込んでくる。
誤魔化そうか一瞬迷ったが、別にその必要もなかったのでエマと話したことを素直に話した。
「エマと?」
「ええ。もう大変だったわよ。イレブンが傷ついてないかとか様子が変じゃないかとか危険な目に合ってないかとか、いろいろ質問されたわ」
可愛い幼馴染がいたのね、と普通に言うと、何故かシルビアが「やーん!」と反応した。
「マルティナちゃんったら、ヤキモチ妬いちゃってかわいい~♪」
「えっ!?」
意外な……だがどこかで解っていたような言葉に、マルティナは思わずシルビアの顔をまじまじと見てしまう。
「わ、私は別に……!」
「あら、マルティナさまったらヤキモチ妬いたんですか?」
「やだ! イレブンったらモテモテじゃない!」
「え? ええ?」
「おいおいマジかよ! まさかの三角関係か!?」
「違うわよ! 私はただ、イレブンに可愛い幼馴染がいてよかったわねって……」
何とか騒ぎを抑えようと声を張り上げるが、盛り上がるシルビアたちには逆効果になっているようだ。「応援してるからネ!」と逆に励まされてしまい、思わず肩を落としてしまった。
と。
「イレブン~!」
イレブンが来たのを知ったエマが駆け寄ってきた。ぽかんとした顔のイレブンに飛びつき、「お帰りなさい!」と笑うエマ。
「いつ帰ってきたの?」
「え? い、今だよ。ちょっとトラブルがあって……」
「やだ! 大丈夫? 怪我してない? 誰かにひどい目にあわされたとかじゃないわよね?」
「だ、大丈夫だよ。ちょっと靴紐が切れただけ」
「よかった! ね、帰ってきたならみんなに挨拶して回らない? お父さんきっと喜ぶわ!」
「あ、ああ、うん、そうだね。母さんの顔も見たいし」
矢継ぎ早にいろいろ聞いてくるエマに、イレブンは半ば流されているようだ。助け舟を出したいところだが、彼女の勢いはそれを許してくれなかった。
イレブンの返事を聞いたエマは満面の笑みを浮かべて、「じゃあさっそく行きましょ!」とイレブンの腕を組んでそのまま引っ張っていった。
後に残されたのは、話についていけなかった仲間たちだけ。
「……何なんだ、あれ」
カミュの問いに対して誰も答えられない。姉妹は困った顔で顔を見合わせ、シルビアは「元気がありすぎねぇ…」とやや眉をひそめる。
マルティナはと言うと。
沈んだ顔で、村の中に消えていく二人を見つめるだけだった。
ほう、ほう、と知らない鳥の鳴き声が聞こえる。
その鳥の声に合わせるように、これまたりん、りん、と知らない虫が鳴く。
そんな夜のしじま、マルティナはただぼんやりと立ち尽くしていた。
――あの後、イレブンは帰ってこなかった。
それぞれが作業を終わらせて戻ってきても、イレブンもエマも帰ってこなかった。ベロニカが何考えてるんだと腹を立てたが、ペルラはよくある事だと笑っていた。
「たまにね、遅くまであっちの家で遊んで、晩飯までごちそうになって帰ってきた事があるんだよ」
それに村の中だから危険なこともそうそうないさ、とペルラは笑ったが、マルティナは笑えなかった。
脳裏に何度も浮かぶ、昼の光景。恋人のように寄り添いながら、腕を組んで歩く二人の姿。
あの姿を見て、自分では無理だと悟った。たとえ自分がエマと同じ立場だったとしても、自分はああいう風になれない。
若く初々しい恋人たちを、後ろで微笑みながら見守る姉。自分の立場はそれしかないのだ。自分がその恋人になれる可能性など、最初から否定すべきだ。
そうだ。可能性など最初からないと思えばいいのだ。そう結論付けたマルティナは、大げさに空を見上げた。
「あーあ、こんな事だったら、エレノア様じゃなくて私が囮になって魔物を相手にするんだったわ」
ついでに大げさにため息をつくと。
「……さすがにそういうのは、冗談でも言わないでほしいんだけど」
予想外の方向から、予想外の声が飛んできた。
慌てて声の方向を向くと、やや赤い顔のイレブンがジト目でこちらを睨んでいる。
「っ!!? い、いつの間に!?」
ぎりぎりのところで悲鳴を抑えられたのは、勲章ものだと思う。イレブンの方も村人が起きる事を恐れてか、慌ててジェスチャーで「静かに!」と伝えてきた。
「……お、遅かったじゃない。みんな心配してたわよ」
声のトーンを落として問えば、イレブンが昼と同じような照れ笑いを浮かべて答えた。
「ごめん、あの後村回ってたんだ。最後に村長の家に行ったら、村長機嫌よくして一杯飲んでけとか言うから……」
イレブンが説明するには。
あの後村を回り(母の元にも挨拶に行ったようだ)、最後に村長に挨拶しようと家に行くと、勇者の帰還に機嫌を良くした村長が食事でもと誘ってきた。
16歳になったイレブンに酒を大量に進めてきたのはいいが、飲みすぎて娘と一緒に仲良く潰れてしまったので、イレブンが介抱せざるを得なくなったのだ。
「僕が最近飲み慣れてきたからよかったけど、最悪3人であそこで潰れてたよ……」
「……そういえば、最近よく飲むようになったものね」
ニズゼルファが復活してから、イレブンは酒盛りにちょくちょく参加するようになった。
こういうのは飲まないと慣れないから、とロウやグレイグが出してくる酒を飲んでいたが、その成果が出たようだ。
「日頃の頑張りの成果が出たわね。ロウさまも喜ぶわ。孫と飲むのが夢だったって言ってたもの」
えへへ、とイレブンが笑った。それに釣られて、ようやくマルティナも薄く笑う。
……が、次のイレブンの言葉でぽかんとした顔に変わってしまった。
「で、酔い覚ましに村の外歩こうと思うんだけど……マルティナも一緒に来る?」
「え?」
薄暗い道なき道を少し歩いただけで、村の外に出れた。イレブン曰く、門番をかわして村の外に出れる隠し通路らしい。
しかし、村の付近とは言え外に出て大丈夫なのだろうか。騒ぎにならないだろうか。
マルティナの心配を見抜いたのか、イレブンが振り向いて「ちょっと歩いたら戻るから大丈夫だよ」と笑った。
「ここらの敵はすごく強いわけじゃないし……僕とマルティナで十分追い払えると思うからね」
「そ、そう……。そういう事なら任せて」
頼られているのが素直に嬉しい。この時だけは、まだ自分を「頼れる姉」として見てくれているのだ。
それからはお互い無言で歩く。話題がないわけではないが、こうして歩いているだけでも……イレブンのそばにいられるだけでも心が落ち着くのだ。我ながら現金だと思う。
村の入り口の明かりが見えるか見えないかという所まで来ると、イレブンがはぁーっと大きくため息をついた。
「どうしたの?」
「……正直、村の中を二人きりで歩いた方が危ないと思ったんだ」
先ほどまでの笑顔はどこへやら、イレブンの表情はやや暗い。大樹を登った時からちょくちょく見たそれではなく、どちらかというと疲れた顔。
「村の皆は僕とエマがくっつくもんだって思ってるっぽいから、旅の仲間とは言え女の人と二人きりで歩いたら何言われるか解らないんだ」
「……そうなの」
昼間の彼女の言葉と、イレブンと腕を組んで歩く光景がまた頭に浮かぶ。
彼女は、イレブンと結ばれることを信じて疑っていないような素振りだった。16年ずっと一緒だったから、自身を含めて誰もがそうなるのだろうと信じているからだ。
辛い事だが、自分もそれを認めなければならない。イシの村で育ったイレブンは、ユグノアの王子としてではなくイシの村の一員として過ごすべきなのだ……。
「べ、別に気にするほど事でもないでしょう? エマちゃんと仲がいいんだし、祝福されるのは悪い事じゃないわ」
灼熱の塊を飲み込むような苦しみをこらえつつ、笑ってたしなめた。しかし。
「そういう可能性を潰すような言い方、やめてくれる?」
イレブンの返事は予想だにしていないものだった。厳しい一言をぶつけられ、マルティナは思わずひるんでしまう。
「みんなそういう感じだったよ。『エマといつ結婚するんだ』、『早くプロポーズしろ』、『お前にゃ勿体ないほどいい嫁じゃないか』、そんなんばっかり。
誰もが『イレブンは邪神を倒した後、村に戻ってエマと結婚する』って思ってる。僕はエマをどう思ってるか、一言も言ってないのに!」
イレブンの拳に力が入っている。彼の心の中でせき止めていた物が、あふれ出していた。
「僕は嫌だ。選択肢があるなら自分で選びたい。可能性を否定したくないんだ」
その時、マルティナは初めてイレブンの本心を聞いたような気がした。
イレブンの人生はイレブンだけのものだ。誰かにコントロールされたくない。たとえ、生まれる前から逃れる事の出来ない運命が刻み込まれていたとしても……。
なら、マルティナの心は一つだ。
「イレブン」
怒りで震えるイレブンの肩に、そっと手を置いた。
「ごめんなさいね。貴方が何も言わないから、その方が幸せだろうって勝手に思い込んでたのよ」
イレブンの返事はない。しかし、マルティナは構わず続けた。
「私は貴方が選ぶのを責めないし、否定もしないわ。私だけじゃない。ロウさまも、グレイグも、カミュも、シルビアも、ベロニカも、セーニャも、貴方を責めないわよ。
貴方は貴方のまま、自由に生きて幸せになってほしい。これはずっと変わらない私の願いよ」
「マルティナ……」
ほろり、とイレブンの目からひとしずく、涙がこぼれていた。マルティナが指でそっとぬぐえば、みるみるうちに顔を赤くして首をぶんぶんと横に振る。
さすがに子供扱いしすぎたか、と反省するが、ぬぐっていた手を強く掴まれた。
「……僕も、マルティナが選ぶのを責めないし、否定するつもりはないから」
「?」
「だから、可能性を否定しないで。選択肢を潰したりしないで」
僕もマルティナに幸せになってほしいんだ。
そう言って手を握り返すイレブン。お互いのぬくもりが、手を通して心の奥深くまで伝わってくる。言葉にされていない思いすら、伝わってきそうな気がした。
口を開いて、何か言いたい。
何でもいいから、何かを伝えたい。本当の気持ちを洗いざらい言う事は出来なくても、ほんの少しだけなら許されるだろうか。
「私は……」
真剣なまなざしの『弟』の顔を見ていられなくなり、思わず視線を逸らす。
昼間どころか、さっきまで考えていたことが何一つ思い出せない。
「私は……」
口を開こうとした瞬間。
かさり
「「!?」」
何かが動いた音に、過敏に反応する二人。
視線を向ければ、動物か魔物か解らない影が、木々の奥へと消えていった。
後に残るのは、手を握り合った二人と沈黙だけ。その二人の熱を冷ますかのように、ひゅうと風が吹いた。
「……そ、そろそろ帰ろう! みんな心配するし!」
上ずった声で言うイレブンに、マルティナはこくこくと黙ってうなずくしかなかった。
ほう、ほう、と知らない鳥の鳴き声が聞こえる。
その鳥の声に合わせるように、これまたりん、りん、と知らない虫が鳴く。
そんな夜の中を、二人は手を繋いで歩く。
気持ちを伝えられない二人は、そのまま黙りこくったまま村へと帰った。