しばらくは昼はメイドの仕事、夜はベッドでブライの相手と忙しい毎日だった。
そして今夜も、ミソラはベッドの上でブライに向けて足を開いていた。
「は……ッ!♡」
「イイ、か……?」
「や、んっ……♡ た、たまんないィ……!」
身体は既にブライのもたらす快感の虜になり、望むように蜜をこぼすようになってしまっていた。
気づけば足を開き、二本の指を受け入れる。そして彼の思うように鳴き、堕ちる。
じゅぷっ
「あああっ♡」
指が抜かれ、代わりに肉竿が入り込んだ。指以上に大きく熱いモノを受けたミソラは、身体をそらして喘いだ。
欲しい、ホシイ。もっと奥に埋め込んで。子宮に届かせて。
(ダメ、なの……に……)
ごりゅっ、ずりゅっ
「はぁんっ♡ あ、ふぁぁっ」
焦らすようなゆるい動きに、思わずミソラの方から腰を動かしてしまう。
思うとおりに罠にかかった獲物を見て、ブライの口に笑みが浮かんだ。
ぱんっ!
「ぉあ゛あ゛あっっ!♡」
待ち望んでいた激しい腰の動き。ミソラは身体を大きくしならせて快感に耐えるが、身体の奥からのそれはいつも自分の予想をはるかに上回る。
肉竿は膣内の一番弱いところを刺激し、膣は肉竿をきつく柔らかく包み込む。雄と雌のまぐわいそのものだ。
ブライに抱き着いても、もう目の前がちかちかとフラッシュを始めていた。耳を甘噛みされたことで、さらにフラッシュが激しくなる。
「イけ……!」
「あ、は、はぁぁあ゛あ゛ああーーーーッッ!!♡♡」
激しい抽挿の果て、ミソラは完全に達した。
「はぁ、はぁ……」
体力がついてきたらしい。いつもなら意識を失ってそのまま眠ってしまうのだが、今回は起きたままでいられた。
(ブライは……?)
隣を見ると、ブライはベッドのふちに座りぼんやりと窓の外を眺めている。まだ終わらせるつもりはないのか、服は着ていない。
窓から差し込む月の光は、彼の身体を淡く照らしている。その傷だらけの身体と遠いまなざしに、ミソラは一瞬目を奪われた。
(……って、見惚れてる場合じゃないってば)
どきどきする胸を無理やり押さえつけ、ブライの身体をじっくりと観察し始める。
(あった)
ペンダントトップそのままではないが、似たようなデザインの痣が体のあちこちにあった。傷の方が多いので、痣が解りにくくなっていたのだ。
改めて、ブライの身体をじっくりと観察する。
実戦で鍛えられたであろう均整の取れた身体。古いのから新しいのまで、小さいのも大きいのもある傷跡。浅黒い肌。顔も整っているし、ナイフを思わせる赤い目も印象深い。
(これだけイケメンだと、女の子が黙ってないだろうな)
そんなことを思う。ブライの性格を考えると、そういうミーハーな女は好みではないだろうが。
と。
「……起きているのか」
ブライに気づかれた。何故か気恥ずかしくなり、シーツを頭からかぶってしまう。
「何故黙っていた」
「だ、だって、起きてたらまたするんでしょ。休憩は終わりだとか言ってさ」
「貴様が望むならな」
「……」
余計なことは言わない方がよさそうだ。ミソラは固く心に刻み込む。
「何をしていた」
……何を言うべきか戸惑った。
素直に痣のことを言うべきだろうか。ごまかすとしても内容次第では、セックス再開だ。
少し悩んだ後、ミソラは口を開いた。
「その、痣が、気になっちゃって」
「痣? ……これか」
ブライが左腕にある痣をなでる。怒るかなと思ったが、意外にもいつもと変わらない顔で答える。
「生まれた時からあったやつだ。オレの民族なら誰でもあるらしいがな」
「民族? 誰でもある??」
ついオウム返しで聞き返してしまうが、ブライは答えずに「話し過ぎた」と言い捨てた。どうやら、触れてはいけなかったようだ。
次の質問を考えていると、ブライがミソラの横に寝転がった。視線がむき出しの胸に行ったのを悟った瞬間、ブライがその胸を揉んだ。
「ちょ、待って……んっ」
「休憩は終わりだ」
先ほどのミソラの言葉をそのまま言いながら、ブライはさらに胸を揉む。乳首をぺろりと舐められ、背筋に快感が走る。
股間がじわりと濡れ始めるのを感じ、ミソラは慌てて引きはがそうとする。しかし腕に力が入らず、逆に近づかれて乳首を吸われた。
「だ、だめぇ……♡」
口先でも抵抗を試みるも、ブライがその言葉を聞くことはないだろう。現に、指も乳首をいじり始めていた。
何度目か解らない快感に襲われつつも、ミソラはさっきのブライの言葉を反芻する。
(ブライのあの言い方……まるでこの国の人間じゃないみたいな言い方だった)
ディーラーは一応多民族国家らしいが、その成り立ちは決して平穏なものではない。少数民族のいくつかは武力で取り込んだと聞いたことがある。
そもそもブライの浅黒い肌は、ディーラーはもちろんミーティアでもあまり見られない。となると、ブライは少数民族の一人の可能性は高い。
……そしてもう一つ、ミソラは気になることがあった。
(誰にでもある「らしい」?)
おかしい言い方だった。
まるで同じ人間を見たことがないような言い方。いくら少数民族だとしても、ブライと同じような痣を持つ人間が誰一人としていなかったというのは有り得るのだろうか?
ブライにはまだ隠していることがある。ミソラはそう確信した。
(私に話す必要なんてないってこと……?)
自分はあくまで身の回りの世話と性欲処理のための奴隷。権力誇示のためのトロフィー。改めてそれを思い知らされた気がして、ミソラは泣きたくなった。
「んんっ!♡」
だが現実は甘くない。ミソラは泣く暇もなく、ブライに指で膣内をかき回された。
(スバル君……)
幼馴染の顔を、思い出す。彼は今どうしているのだろうか。
(助けて……)
心の底からそう願った。
このつらく、切ない気持ちを救ってほしい。目の前にいる男が何を考えているのか知りたいのに、何一つ解らないこの苦しさを、何とかしてほしい。
自分が本当におかしくなってしまう前に。
「はぁ、ああっ♡ か、かき混ぜない、んっ、でぇ……っ」
「締めるのをやめるなら考えてやる」
「む、無理だよぉぉ……♡」
いつしかミソラはうつぶせになって、ブライの指を受けるようになっていた。快感をうまく逃がしきれず、身体の奥からじわじわと熱がこもってくる。
身体の方も既に出来上がってしまってる以上、締め付けるなと言うのが無理な相談だ。結果、ミソラは身体を震わせ枕を握りしめて快感に耐えるしかなかった。
それでも必死になって頭を動かし、自分にできることを考える。
(結局、あのペンダントはどうすればいいの……?)
倉庫で見つけたペンダント。あれが本当にブライの物なら、何かに役に立つかもしれない。だが渡すタイミングを誤れば、ブライの怒りを買うのは必至だ。
ラプラスに渡せば波風立たずに終わるだろう。ただし何も解らないままだ。
(……知りたい)
心の底からそう思った。
逃げるにしても留まるにしても、ブライの事をもっと知りたい。
何故このような場所に住んでいるのか、何故人を寄せ付けないのか、何故自分を選んだのか。何も知らずに彼の元を去るのは、誰のためにもならないと思った。
(ペンダントの事はまだ話さないでおこう。いつかブライに渡す時まで)
ミソラはペンダントの事を考えることで、ブライの肉欲のピストンにひたすら耐え続けた。