孤独な欲望に囚われて・1

 某月某日。
 小国ミーティアが隣国ディーラーに攻め入られ、敗北した。
 国王は国民の安全と引き換えに自身を差し出し、さほど日を待たずに処刑されてしまった。
 ミーティアの民の命の安全は保障されたが、その立場は保障されることなく、奴隷や娼婦として売り出される者も少なからずいた。
 そして、その中には絆の歌姫ハープ・ノートとして国民に慕われた少女ミソラもいた。

「あっ……ひ……っ、はぁ……っ♡」
 バックからがんがん突かれたミソラは、甘い喘ぎ声をあげる。
「や、だ……っ! もう、突かない……でぇっ!」
 一糸纏わぬ姿で男の肉竿をただただ咥える姿は、戒めこそないものの奴隷と変わらぬそれであった。
 そんな彼女を快楽に堕としているのは、浅黒い肌と白い髪が特徴的な男。今の彼女の主人と言える男だ。
 男はミソラの涙ながらの懇願を鼻で笑う。
「止めてもいいぞ。……貴様が咥えるのを止めることができればな」
 わざとじらすように浅く突かれ、ミソラは条件反射的に男の肉竿を逃がさないとばかりに強く締め付けてしまう。
 そう、快楽に慣れきってしまった身体は、こういう時どのように動くかを理解してしまっていた。故に、ミソラの意思を無視して男を求めてしまう動きを取ってしまうのだ。
(も、もう、したくないのに……っ!)
 今でも男を殴り飛ばして逃げ出したい。この絶好のチャンスを逃したくない。
 なのに、身体は肉竿を、快感を求めてしまう。乳首や陰核も、もっといじってと言わんばかりに固く勃ち上がってしまうのだ。

 ずぷぅぅっ!

「ああぁぁっ♡」
 肉竿が一番弱い場所を刺激した。
「ふ……ぅっ♡ あ……んっ! あぁぁ♡」
 えぐるような動きに身体を大きくそらして耐える。びくびくと身体が大きく震え、シーツを握る手に力が入った。
 いつもこうだ。何とか拒みたいのに、身体は男のもたらす快感に負けてしまう。
(帰りたい……)
 いつもこう思う。もしあの時……国が敗北するあの時、大人しく避難所にいれば、自分はまだあの国で静かに暮らせていたのかも知れなかったのに、と。

 国の運命を決めてしまった撤退戦。
 ミソラは流星の勇者シューティングスター・ロックマンスバルが危険な殿を務めていると聞いて、居ても立っても居られずに外に飛び出してしまった。
 一応そこらのチンピラや兵士は追い払えるぐらいの実力はあった。だから、そうそうやられることはない。そう考えたのが油断だった。
 城下町制圧に回っていた敵に見つかり、捕まってしまった。一人なら何とかなると思っていたが、その相手が敵国の実力者だったのだ。
 孤高の戦士ブライと言われているその戦士は、いともあっさりとミソラを捕らえ、ディーラー王の前に連れて行った。そして褒美としてミソラを所望した。
 敵国の人気歌姫ということで王は少し渋い顔をしたものの、すぐにその願いを受けた。こうしてミソラはブライの物になってしまったのだ。
 何故かひっそりとしている屋敷に連れていかれ、すぐに犯された。
 服を破る勢いで脱がされ、半ば無理やりに唇を奪われた。それからは胸や秘部への愛撫を受け、初めての快楽に狂わされた。

 ――初めて? その割にはひぃひぃよがっているじゃないか。
 ――ち、違……あぁんっ!♡

 必死になって抵抗したものの、気持ち良さからまともに体は動かず、さらに相手からの愛撫を受けた。
 気持ちよくなりたくないと思って歯を食いしばっても、手慣れているのか男の動きの方が一枚上で、何度も体をくねらせてよがった。
 気づけば相手に向かって足を開き、男の肉竿を受け入れてしまった。

 ――い゛ッッ!!
 ――ぐっ……!

 破瓜の痛みと、理想とは全く違う相手に処女を奪われたショックで涙がこぼれた。
 あの時ほど死にたいと思ったことはない。相手を殺したいと思ったことも。しかし現実は非情。できたことと言えば痛みに耐え、早く終われと心の中で祈ることだけだった。
 それ以来、男……ブライは毎晩ミソラをベッドに連れてきては、自身が満足するまで抱く。例外はなかった。
 セックスの回数はその時その時で違い、二回ぐらいで済ませる時もあれば、朝まで抱かれた事もあった。共通していることは、相手が満足したら寝かせてくれることと何か飲まされることだ。
 一度反発して逃げ回ったこともあったが、やはりあっさりと捕まった。その時はお仕置きと称して、倒れるまで抱かれてしまった。

 ――オレの気分次第ではすぐに捨てることもできる。その時は、貴様だけとは限らない。

 暗に自分や他の奴隷たちも慰み者にするぞと脅され、ミソラは渋々従うようになった。それ以来、なるべく相手の機嫌を損なわないよう従順になるよう努めた。
 いつかは誰か……スバルが助けに来てくれる。そう信じて。

「イ、イキそぉ……っ!」
「出すぞ……!」

 ぱじゅっ! どちゅぅぅっ!

 激しい肉欲のピストンによって、ミソラの目の前が真っ白になっていく。ブライも絶頂が近いらしく、腰の動きがさらに激しくなっていった。
「う……!」
「あっ、あっ♡ ひぁぁあああああーーーっっ!!♡♡」
 びゅるるっ、と中で吐き出される感覚に、ミソラの体はどくんと大きく跳ねた。何度目か解らない絶頂に、ミソラの意識は薄れていく。
 ブライもそれに気づいたか、水を飲んだかと思うとこっちに口づけた。
「ん、ちゅ……っ」
「ふ……ぅっ」
 水とともに何かが口の中に入り込む。
 毎回終わりになるとこれを飲まされるのだが、正体が何かは解らない。解ることは次の日、快感がさらに増すことが多いくらいか。
 恐らく、自分を快楽漬けにして堕とそうとしているのだろう。そうすれば、もう二度とブライに逆らうことが出来なくなる。
 何とか気を持たせなければ、とぼんやり思いながらミソラは意識を失った。

 ……そう決意したものの。

「は……ぁ、ん♡」
「随分と淫乱になったな」
「や、やめ……んんっ」
 固くなりつつある乳首を左手でくりくりといじられ、蕩けた声を上げてしまう。空いた右の方を強く吸われ、びくりと体が跳ねた。
「吸われるのと舐められるの、どっちがいい?」
「ど、どっちも嫌よ!」
「嘘をつくな。欲しいとねだっているぞ」
「ふぁっ♡」
 ささやかな反抗も甘噛み一つであっさり終了してしまう。ぴくぴくと震える乳首は、明らかにいじられるのを待っていた。
 つまんで引っ張られたかと思うと、指の腹でぽんぽんと軽く押される。舌で塗りたくられるようにねっとりと舐められ、ミソラは熱い息を吐いた。
(おっぱいだけでイく……ヤだ……)
 どれだけ歯向かおうとしても、身体の方が言うことを聞かなくなってしまう。これでは完全にブライの思うつぼだ。
(スバルく……ん……)
 瞼の裏に浮かぶ幼馴染の少年に呼びかける。
 小さいころから一緒だった彼に、ミソラはほのかな思いを寄せていた。周りがもてはやすこともあり、いつかは彼と結ばれるのだろうとも。
 キスもセックスも、多分彼とするのだろうと思っていた。それなのに、両方とも目の前の男に奪われてしまった。
 一日ごとに淫らになっていく自分に対し、彼はどう思うのだろうか。自分の国を滅ぼした国の男に抱かれて鳴く自分を、軽蔑しないだろうか。

 ぢゅうううううっ!

「はぁぁんっ♡」
 乳房を強く吸われたことで、軽くイッてしまった。ついそっちに視線を落としてみると、赤い痕になっていた。
「――!!」
 快楽の熱が、あっという間に怒りの熱に変わる。きっと強くにらむが、ブライは涼しい顔だ。
「何の真似よ!」
「痕を付けただけだ。これで人のものに簡単に手を出されまい」
「ひ、人をモノのように言わないで!」
「どうだかな」
「か、勝手に……」
 決めるなと言おうとした瞬間、唇をふさがれた。口の中をかき回され、怒りの熱がまた快楽の熱へと変えられていく。
 それでも、心の奥底にこびりついた怒りはそうそう消えそうになかった。
(……許さない)
 こいつだけは許さない、と改めて心に誓った。